白鳩なんか喰い殺せ

バビロンの白鳩なんか喰い殺せのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
1.0
もし映画研究家を名乗る人間がこの映画を賞賛したら、そいつの研究家の道は途絶えたと思っていい。少なくとも俺は話したくもない。死んでも見ないと決め込んだこの映画を訳あって昨日再び見た。初見時には無かった修正がDVD版(😢)にあって、それはよくあることだから「あーはい。」と思ったのだけど、映画館でも無修正版が掛かったのは数日らしい。チャゼルを初日に行った俺が馬鹿馬鹿しくて笑えてくる。

俺の嫌いなトム・ハンクスさえ良かったAsteroid Cityとは真逆に、チャゼルによって醜く書割化された全ての登場人物のうちインテリ面した文化人クソババアに糞を垂れ流される「サイレント映画時代の落ちこぼれスター」を時に準じて演じるブラッド・ピットだけは良い(ジャック・コンラッドは含まれない)。彼の存在だけがBabylonという絶望的に低俗で貧しいアメリカの大作映画を見ている間も「なにも今日がこの世の終わりではない」と慰めてくれるようだ。Babylonは、その意志をドキュメンタリーの手法や実存する記録のフッテージなどでは描けない様にも「フィクションである意味」が現れているが、それもどこまでも作為的で自己満足に過ぎない。何もかもが描かれず、代わりに誇らしげに用意された幾つもの記号(冒頭、誰もが憎むべき象の糞尿シーンから屋内に切り替わる時の小道具ひとつで既に分かる通り。そして「ガルボ」「モンロー」「悪趣味」に至るまで)と「敢えてそうして、炙り出している」とのしたり顔で紡がれたチャゼルの映画史なんかになんの価値も無い。チャゼルの鼻をへし折ってやりたいと思う。感動を共有させようとする編集の手口や「それっぽい設定の解説」と副読的に語られることで磨きを増すと言わんばかりの様など憎悪に値する要素を短冊状に書くときりないが、本当に全てが最悪だ。チャゼルお得意のmalegaze、結婚大好きな立ち位置も相変わらず気色悪い。死ねボケ。
…こうして、鬱憤の箇条書きでこのページを終えるのはあんまりな気がしたから、代わりの才能として、どうやらチャゼルの友人でもあるデヴィッド・ロバート・ミッチェルの名前を書いて終えたい。彼の方が立場から空虚な狂乱に至るまでより自覚的だし、知性もユーモアも遥かに優れていて、ミッチェルこそ有名になるべきアメリカの若き才能だ。愚かなハリウッドは彼をサポートせよ。そして今後、良し悪し問わず様々な映画が制作され公開されるべきであり、同時にチャゼルにゴダールfin.を引用させることを禁じる法律を作るべきだ。