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バビロンのmat9215のレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
2.0
象が垂れ流す大量の糞とマーゴット・ロビーが放つ大量のゲロ。この志には共感するものの、映画センスには共感できない。とにかく長いし、ディエゴ・カルバが『雨に唄えば』を観ながら幻視する映画史上の有名作群やゴダールへの目配せも響かない。

映画が音を得たことによって、ハリウッドのスターが入れ替わったのは映画史上の事実だ。『雨に唄えば』に描かれたような悪声だとか台詞回しが下手な俳優だけでなく、英語が苦手な俳優も退場を余儀なくされた。無声映画(サイレント)では非英語圏出身の俳優が活躍できたのだ。かの早川雪洲や上山草人もその事例。『東京ジョー』や『戦場にかける橋』における早川雪洲の英語は渡辺謙や真田広之とは比べものにならない。

本作の題名はケネス・アンガーの著作『ハリウッド・バビロン』を踏まえているのだろう。1960年代に刊行された同書はハリウッドにおける恋愛や殺人のスキャンダル・エピソードを集めた倒錯的なハリウッド賛歌だった。刊行時点のハリウッドはテレビの普及によって凋落の底にあった。山腹に据えられた有名なHOLLYWOOD看板も近づいて見るとボロボロだ。なお、この看板はもともとは不動産屋が設置したもので、HOLLYWOODに続けてLANDの文字があった。なお、hollyはヒイラギであり、hollywoodを『聖林』と訳したのはおそらくは意図的だ。美しい誤訳。
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