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バビロンのyukoのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
4.8
3時間息つく間もなく、ドキドキさせてくれるノンストップエンタメ超大作。演出も構成もまったく飽きさせないのはさすが!絶対に映画館で見たかった。100倍楽しめるはず。

ネリー役のマーゴットロビーは、この人しかあり得ないってくらいハマり役。とにかくパワフルで明るくてコミカル。セックスシンボルだけどいい意味でエロくない(健康美)人好きする人間臭さは絶対に好きにならずにいられない。

サイレントの栄華時代からこぼれ落ちていくブラピの役は、ワンスアポンアタイムハリウッドのレオ様と重なったなぁ。こういう役がハマる歳になってきたんだなぁと感慨も深い。

舞台はサイレントからトーキーに移行していく時代のハリウッド。映画界の裏側の狂喜乱舞の描写が一本のミュージカルになりそうな、ド派手さ。細部までもっと観ていたい。そして全編に渡りなんといっても音楽に痺れる。さすがチャネル監督。

"大きなものの一部になりたい"マニーの目を通して普遍的なテーマを描くのは、セッションやララランドの主人公にも通ずる。三作とも何者かになって何かを残したい若者の葛藤や熱を描く所が共通している。

そして監督の溢れる映画愛。個人的にはタランティーノ映画に想いを馳せてしまう。映画人として、純粋に映画を愛し、大きなものの一部として100年後の誰かが手に取るかもしれない作品を残す、映画の遺伝子のようなもの。永遠に盛者必衰の世界。無数に現れては消えていくスター、作品。それらは人間と時代そのものとは言えないか。

エリノアがジャックを諭す会話のシーンで、監督はエリノアに自分の想いを言わせているように思う。

映画の転換期に溢れていった人たち、作品、流行と時代の移り変わり。すべては変わっていく。でも作品は遺跡のように残って未来の時代でも消費可能だ。それを知った上でチャゼル監督は自分の遺伝子に生涯をかけているのでは。情熱とヒリヒリする痛々しさを感じる程に、放出された彼の概念が詰まった映画だった。

映画館が廃れ、配信映画の時代になりつつある現状にも重なるが、媒体や技法が進化しても、根本は変わらないように思う。

ラストは賛否両論あるが、本編とは離れた監督の頭の中を覗いたような、熱や愛を伝えたい純粋な想いを感じざるを得なかった。

痛みを伴いながら、何かを生み出す者。それを暗闇からじっと見つめるゴキブリ。こんなものを見せてもらえるなら私は喜んで特等席でゴキブリであることに甘んじよう、なんて思った。
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