Aix

バビロンのAixのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
3.8
セッションやララランドなどで知られるデイミアンチャゼルの作品。サイレントからトーキーへと移り変わるハリウッドの話。

フェリーニの8 1/2や甘い生活を下品にしたような作品でした。今作は楽しくて、笑えて、混沌としていて、切ないストーリーなんだけど、撮影と劇伴が本当に素晴らしいし、ブラピ、マーゴットロビー、ディエゴカルバの演技もとても良かったです。全体的に下品なのも悪くなかったと思います。今作はケネスアンガーの書籍とやはりフェリーニの甘い生活から影響を受けているようだし、当時の無秩序なハリウッドを表現しているのに品性があったら逆に変でした。

そんなこんなで(?)映画が始まってから最初の1時間くらいは大傑作を見ているという感じがしたんだけど、後半になるに連れてストーリーがくしゃくしゃになっていた気がします。今作は群像劇ですが、正直ジャズのパートも、中国系アメリカ人のパートも、トビーマグワイアのシーンも必要性はそこまで感じられなかったです。まあジャズの下り映画史的には重要だからあるべきなんだけど、そんなに面白くなかったというのが本音です。ブラピと主人公の関係をもっと描いて欲しかったし、ジーンスマート演じる記者の出番も少なくて結構違和感がありました。予告編を見ても分かりますが、今作は元のシナリオと現場で撮った素材にかなりの違いがあると思います。もちろん何パターンも撮影しているんだろうけど、元の脚本が生かされなかった分、後半部分で間延びしたのかもしれません。というかラストの引用も、あっさりしていて個人的には少し残念でした。

まあ悪いところもたくさんあるけど、相対的にみると映画作りの映画として面白かったです。チャゼルが好きな人は今作も好きになるだろうし、チャゼルが嫌いな人は今作のことも嫌いになると思います。
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