かべ

ブラックバード 家族が家族であるうちにのかべのレビュー・感想・評価

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尊厳死を扱ってはいるが、本質は愛に関する映画だ。

キリスト教式における結婚式の宣誓に「病めるときも健やかなるときも共に歩み」という一節がある。この言葉どおり、いかなるときも家族に対する責任を持つ、結婚はそこまでの覚悟をもってするものだと、私は思う。
その考えを持つ私から見ると、リリーの行動は私が絶対に選択しないものであった。特にある行動は、思いやり以上に身勝手さを感じ、死を前にした人間の特権を振りかざしているように見えた。個人の考えを尊重することこそが最も重要な愛という考え方もあるだろうが、それは家族でなくてもできるだろう。件の行動は、同等の立場で家族間の意見の擦り合わせをしたほうがいい事項を、家族間のわだかまりを考慮しないままにリリーの意見を一方的に押し通したように感じた。

かと言って本作が退屈であったわけではなく、自分とは全く違う行動をする人々の様子を見て、「こういう考え方もあるのだなあ」とむしろ興味深く感じた。こういう驚きは、自分の考え方や行動原理を整理する機会になる。
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