KnightsofOdessa

The Anchorage(原題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

The Anchorage(原題)(2009年製作の映画)
1.5
[ある秋、孤島の生活] 30点

ストックホルム群島の小さな島で自給自足の生活を送る、監督の一人アンダース・エドストロームの実母ウラの日常について、ウィンターと共に製作した長編一作目。冒頭、鬱蒼とした森の中を歩いていたウラは、岩だらけの海岸でいきなり全裸になって海に飛び込む。そして、5秒くらいで出てくる。監督のお気に入りなのか似たシーンが三回も登場する。ウラ本人は電気も水道も通っている小綺麗なロッジに暮らしているので、この水浴びは朝の景気付けみたいなものなんだろうけど、ここだけ"孤島で自然とともに暮らす人"というイメージ(というかベルイマンで見慣れたフォール島のイメージ)に寄り添ってるのが興味深いところ。島には彼女以外にもご近所さんがいるらしいが、基本的には自分の持っている小さい埠頭が自分のスペースの玄関で、車感覚でボートを操作して本土で買い物をし、郵便受けや来客は島の公用玄関である大きめの埠頭を使っているようだ。なんだかんだ子供たちも遊びに来ているし、困難な生活をしているという感じはしないのだが、次作『仕事と日(塩谷の谷間で)』を知ってしまったからには、駆け足で説明する87分は少々味気ない。監督たちは本作品を以て、自らの実験には8時間の上映時間が必要だと悟ったんだろう。その論理は鑑賞者にとっては迷惑だが、間違ってはいない。

ちなみに、一部界隈では本作品がポスト・ドキュメンタリーと騒がれているが、それだけは全力で否定したい。これはただの再現ドラマである。次作に比べて比較的明るいのはありがたいが、驚くほど中身がない。
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