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Civil War(原題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

Civil War(原題)(2024年製作の映画)
2.0
[内戦下のアメリカを"撮る"こと]

アレックス・ガーランド長編四作目。キルステン・ダンストとケイリー・スピーニーというソフィア・コッポラの新旧ヒロインが二人も登場している。四勢力に分断されて内戦下にあるアメリカで、ジャーナリスト集団が死に体の忠誠派の親玉である大統領にインタビューすべくNYから迂回してワシントンを目指す話。分離主義勢力の中でも強力なのがテキサスとカリフォルニアが手を組んだ西部同盟という組織なんだが、そんなことあり得ないだろというのが面白ポイントらしい。一行は有名な女性写真家リーも参加していて、彼女に憧れる新米写真家ジェシーも旅に同行することになる。初めの方こそ残虐な前線に驚いていたものの、徐々に暴力に鈍感になって慣れていく一方、彼女を導くはずのリーは戦場取材に何の意味があるのかとの疑念を強くしていく。本作品でも撃つ=shootと撮る=shootが重ねられており、どの勢力にも属さずにカメラを武器に戦う彼らの姿勢は描かれていたと思う。思うのだが、気になるのはSONYのミラーレスを構えるリーに対して、父親から貰ったというNIKONのフィルムカメラを構えるジェシーの存在は、そういった写真に対するフェティッシュを表しているようにしか思えず、監督はそこに悪ノリして"1.6以降のアメリカ"を誇張した世界にフェティッシュを感じているようにしか見えなかった(IWのデヴィッド・エーリヒは"彼の作品は全部『アナイアレーション』と呼べる"と言っていた)。映画自体が、写真そのものより写真を撮るゲームに熱中しているジェシーそのものなんだ。一方のリーも、人生そのものだった報道写真の効果に疑念を抱く実存的危機で頭がいっぱいなので掘り下げもされない。二人の思考が完全に入れ替わる瞬間に服の白黒が入れ替わるのだけは面白かったけど。あと、たまに後ボケの色にじみがワンショットの間に変化することがあったんだけど、どうやってんだろ。
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