「歌は作るものではなく、心からこぼれ出てくるもの」
これぞリアルな『聲の形』。
序盤で齋藤陽道氏の母が「自分のせいで音楽を嫌いにさせてしまった」と語っているが、耳の聴こえない陽道氏は息子の樹くんをあやしながら自然と子守唄を口づさむ。
耳が聴こえてようとなかろうと、人間の根底には音楽が在ることを教えてくれる瞬間。
だが音楽以外にも、人間には筆記や手話、写真、プロレス(ボディランゲージ)といった多様な意思や感情の伝え方、受け取り方がある事も再認識させられる。
ナレーションを廃し、エンドロールも含めて劇伴を流さないことで、彼らのコミュニケーションをありのまま切り取る。
音楽を視覚的に表現した"絵字幕"や、陽道氏と樹くんのやりとり(樹くんが言葉よりも先に手話を覚えたり、陽道氏の手拍子に合わせて足踏みしたり)を見ていると、世界は自分が思ってる以上に豊かな側面があると気付かせてくれる。