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アンテベラムのmichikoのレビュー・感想・評価

アンテベラム(2020年製作の映画)
4.0
コレはやられた!個人的には『ゲット・アウト』『アス』以上の驚き。これから観る人はあらすじを一切読んではいけない。1行目からネタバレそのもの。全く情報を得ないまま、監督の手のひらの上で転がされて欲しい。

1860年代の南北戦争。奴隷制存続を主張する南部11州が合衆国を脱退してアメリカ連合国を結成。北部のアメリカ合衆国と南部の連合国の間で行われた内戦。綿花プランテーションにて奴隷として労働を強いられ人としての非道な扱いを受けて来た彼らは、白人至上主義からの脱出を虎視眈々と狙っていた…。

英語における「civil war」は単に「内戦」を意味する語だが、アメリカ合衆国では独立後に内戦があったのはこの時だけの為、国内では「the Civil War」は南北戦争を意味する。なるほど、彼らにとって「シビル・ウォー」とは単に思想の異なる内戦ではなく、現代にも蔓延る差別と過ぎ去ることも無く繰り返す歴史の象徴であり、その名前を冠する意味は重い。それはまさに本作のオープニングに登場するウィリアム・フォークナーの言葉「過去は決して死なない。過ぎ去りさえしないのだ」そのものであり、我々日本人には到底分かり得ない深く恐ろしい問題なのであろう。

過去様々な作品で黒人人種差別は描かれているが、そのテーマの作品が描かれなくなる事はなく、今も作り続けられている。この現代においても未だに差別は存在し、それが意識的だろうが無意識だろうが、彼らは感じ取っているからである。だからこそアフリカ系アメリカ人のアリエルの姿を見ただけで歓喜し涙する少年少女が存在し、その衝撃的な映像に世界は改めて気付かされるのである。
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