ひよこまめ

星の子のひよこまめのネタバレレビュー・内容・結末

星の子(2020年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

とても引き込まれて観た。
ちひろにとっては「宗教のある暮らし」がデフォルトだけど、大人になるにつれてそれは「異端」であるらしいと気づき始める。
中学3年生のちひろの中ではまだ「宗教=両親」で、自分自身の事にはなっていないから、これからの人生で、ちひろは何に「気づいて」、どう「変わって行く」のだろうか、と思う。

ラストシーン。家族3人のバックショット。両親の腕にしっかり抱かれているちひろの図は、まだ親の呪縛の中にいるようでちょっとゾッとする感じ。
だけど、両親とちひろは同時に同じものは見れない。
見えてないものを両親に合わせて「見えた」と言わず見えないことを素直に「見えない」と言い、自分だけのタイミングで「見えた」ちひろが、未来を示唆しているように思え、そこに微かな希望を感じた。

子どもから大人への過程でアイデンティティが形成される「さなぎの時期」を絶妙に描いて見せている映画だと思う。

宗教。決して悪意をもって描かれていない。妙な儀式も、別に他人に迷惑をかけているわけでもないし、ちひろに日常的に強要してる風でもない。
研修会も楽しそう。
だけど、どうも日常生活の状態がおかしい。育ち盛りのちひろに満足な食事を出しているようには見えないこと、入信のきっかけとなったちひろの乳幼児期の病弱、その育児記録を書いた10年日記が、中3のちひろの雑記帳になっていること、それらが、両親がすでに初心を忘れて宗教に「取り込まれてしまった」ことを表しているようで、優しい両親の笑顔も仮面のように見えてくるのでした。
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