kawaebi99

ワールドエンドのkawaebi99のレビュー・感想・評価

ワールドエンド(2019年製作の映画)
4.1
オーガスト ウォーズのお母さん登場!

兵士が一般市民たちを殺戮しまくる未だかつて見たことが無い非道のシチュエーション!


冒頭30分は打ち切りなった米国TVドラマフラッシュ フォワードのパクリかと思ったが実際は全く違った

ロシアのSF映画は期待を裏切らないし お金をふんだんに使いまくってるなぁ ハリウッドのSF映画より上なんじゃないか?と思えるほどCGとの実写合成にリアル観があった
見応えも充分に素晴らしく今のロシア、ウクライナを予測していたかのような市街地戦の映像は痛々しく 心の通わなくなった人間同士の戦いは もはや物と物のぶつかり合いでしか無いという虚しさが画面から伝わってくる
アメリカ映画では安易にこれを仮想してゾンビの群れや猛獣エイリアンの群れ、あるいは殺戮ロボット軍団としてボヤかして扱う
だがこちらはロシア、陸続きの向こう側との人間同士の戦いは現実世界でいつでも起こりうる、空想上の生物などより優先される恐怖なのだ

SF映画としての視点でもハリウッドの企画を上回っていた もし未知の超知的エイリアンと遭遇した際には人類を守るために人間同士の戦いが行われることも想定しておかなくてはならないという最も深刻な状況をこの映画は予測している

そんなことを思いながら次々と押し寄せる緊急事態の連続を最後までドキドキしながら楽しめた

物語も良く練り込まれていて
世界崩壊 人類滅亡は突然始まり、そこに序章は無く物事は一瞬で終わる
現代人の我々は自分たちのことを知的生命体と自己分類する しかしそれは地球上で優位な立ち位置にあるというだけで宇宙規模では未熟な生物の集まり 未だに地球以外に向けては無防備
映画の序盤、戦争が起きたのか? = 何処かの国が核爆弾を使ったんだ!と一般市民たちが何度となくそう言うセリフを口にし世界の大国たちが一番恐れている最悪の恐怖をさらりと語る 実際は、この映画ではもっと別の滅亡シナリオのスイッチが既に入っており 後戻り不能、回復不可能なワールドエンドへのロジックが稼働を始めていた

人類同士が戦争を行うことなど 地球史のほんの序章に過ぎず 覇権争いに明け暮れる人類は知的生命体などではなく宇宙規模で見ればウィルス的存在なのだとこの映画は言い放つ

そしてたどり着く 新しい時代の到来
この結末はハリウッド映画からは絶対に生まれて来ることはない
惑星ソラリス以来 発せられるロシア産SF映画特有のアンハッピーな存在との対峙を仄めかす素晴らしいバッドエンディングだった

観る側に想像の余地を残してくれるラストに🍻


備忘録(ネタバレ)
















エイリアンはこの世界観を描くための駒の一つに過ぎず その裏には現代の人々が抱く多くの不安が語られている。助けて保護したはずの市民に殺される恐怖もそのひとつ。
沢山の人種、宗教を束ねるロシアが抱えている「隣国が明日の敵になるかも知れない、善意が仇で返されるかもしれない」という安定感の無い国同士の結束の崩壊がそれだ。
「(エイリアンに)心を奪われて昨日までとは全く別の人に変わってしまった市民たちが武器を手に襲って来る!殲滅せねばロシアが滅ぶ!!」そう自分に言い聞かさなければ兵士が市民を撃てるはずがない。まるでウクライナ侵攻へのプロパガンダ映画のよう。こんな話 敵から国家、国民を守る映画を奨励しているアメリカから出て来る訳がない。ロシアでは同朋や国民さえも敵になりうる。
戦場で行われている全てのことを記録するという役割で民間の女性記者が同行。その存在意義が今のロシアの国情なんだなぁと思うと感慨深いものがある。


娯楽SF映画としては
エイリアンの成長スピードがどのくらいなのか想像すら出来ないが、この女性記者が身籠った子供との間に良い関係を築いてくれることを願う。

人類の特徴のひとつは野生的な生殖能力ということなので生き残った大人たちの夜活にも期待😁
頑張れ人類!!!
kawaebi99

kawaebi99