まつ

ミス・アメリカーナのまつのネタバレレビュー・内容・結末

ミス・アメリカーナ(2020年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます


今や世界的大スターになったテイラー・スウィフトのドキュメンタリー。
この手のドキュメントではお馴染みの、普通の人間が急にスターになった戸惑いと苦悩も勿論描かれているのですが、この作品で1番メインになっているのは、自分自身を生きるための自己解放と世間との戦いでした。

誰にも嫌われたくない、褒められたい、そういった承認欲求の強い少女(SNSが普及した今となっては、有名無名に問わずそういう人間は山の様にいるわけだが)であるが故にスターになるために優等生を演じて、レーベルやスタッフの言うことを聞いていたが、自身に降りかかった事件をきっかけに自分の意見を持つ重要性に気づく。

ジェンダーについての価値観も、有名人の政治的発言についても、日本より遥かに進んでいる(少なくとも自分はそういう認識を持っていた)アメリカでもこれほど女性が自分らしく振る舞ったり、スターが政治に対して表明することがリスキーなことなのかと驚き、同時にその中で成長して優等生の自分を捨て、世の中の不条理と戦う決意をしたテイラーのカッコ良さと、美しさに脱帽しました。

スタッフに民主党支持を表明することを反対された時涙ながらに説得する強さと、ライブ後母親に「汚いやつらと戦ってそれを芸術に浄化させた、自慢の娘よ」と言われて微笑む美しさがいつまでも胸に残ります。

自分にとってパンクというのは何に対しても、どんな権力に対しても屈しない精神性だと思っているのですが、そういう意味でテイラーはパンクス。

彼女の音楽に中々自分は入れ込めなかったのですが、それはまさにどこか優等生的なミュージシャンだったからこそなのかもしれません。そんな自分が1989の時から急に彼女の音楽に惹かれ始めたのには、彼女自身の変化が作品にも反映されたからなのかもしれないなとこの映画を観て思いました。
「老けた女性歌手が捨てられる世界で生きている。だからこそ休むヒマはない。」
かつて人に嫌われるのを恐れた少女はもうどこにもいません。
いるのは信念を持って世の中と向き合う決意をした大人の女性です。
テイラーのことがますます好きになりました。

「グリッターを付けてこの世の二重規範と戦いたいの、ピンクの服を着て政治の話をしてみたいわ。両方好きでもいいじゃない」

テイラー の今後の活動が楽しみです。
まつ

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