エマ

プロミシング・ヤング・ウーマンのエマのレビュー・感想・評価

4.0
誰もが共感し涙を流し、冷や汗をかく危険な可能性を孕んでいる作品。

とてもじゃないけど、他人事として見ることは出来ない。この作品を見て「俺には、私には関係ない」と思えてしまう人間こそこの作品内のクズになりうる(または既にそうである)可能性が高い。
この作品が精度の高い脚本になっているのは、とりあえず男をボコボコにしようというある種の過激なフェミニズムの再現になっていないところ。解決すべき酷い問題に「誰しもが」加担しているというのがテーマである。

主人公のカサンドラがめちゃくちゃ冷酷な人間でないだけに、近い距離の話だと実感することが出来る。

「プロミッシングヤングウーマン」というタイトルは、劇中のセリフで出てくる「有望な青年(プロミッシングヤングボーイ?マン?)の将来を奪ってはいけない」の対比から取っていると思われる。
将来を奪ってはいけないというのは、全ての人に対して思われるべきことである。
当たり前のことを言っているようで、案外日常生活では無意識に差別をしてしまっている。まずはそれを認識することから始めなければならない。

劇中の男のセリフはどれも「典型的な」差別的発言であり、どれも日常生活において普通に耳にすることのあるものだ。だからこそリアルで、そして気付きを得ることが容易い作品になっている。
復讐を完了させるにあたって自らが犠牲にならなければならないというのは、どうしても意味合いを感じてしまうものだ。
エマ

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