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るろうに剣心 最終章 The Beginningのhrdのレビュー・感想・評価

4.3
原作もファンですが、何よりも追憶編OVAの大ファンです

あまりにもOVAに思い入れがあるので、今回ヒヤヒヤしながら見ましたが、とてもよかったです。

個人的な印象は、原作の実写化というより、OVAの実写化という印象。
セリフや情景描写を含んだ作品自体の情緒はやはりOVAすごいなと感じましたが
今回の実写では、原作とOVAの大事なポイントを取り入れ、過去の作品をとてもとても大切に扱っているなと凄まじい愛を感じました。

細かいセリフや、最後のシーンまで…
ところどころ細かい演出がアレンジされているけど、それが全て剣心と巴の関係性を魅せるアレンジになっていると感じました。
今回実写版を見たからこそ、OVAの剣心と巴さんの関係性に改めて気づくことがあり色々と発見のある作品でした






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以下細かいシーンについて。

OVAの巴さんと剣心って、一緒に暮らすまでは結構緊張感がある関係だと思います。
例えば「人を殺め続けるのですか?」と問い続ける点についても、実写版巴さんは割と剣心の立場にも思いをよせ、時代の犠牲者だと言葉にする。
一方でOVA巴さんは「私には理解出来ぬ生き方です」と突き放したりもする。

この関係性の違い、巴さんが剣心に別れを告げる言葉にも如実に現れてる気がします。

原作・実写版巴さんは、「さようなら、私が愛した2人目のあなた」
OVAの巴さんは「私を愛してくれた2人目のあなた」なんですよね。
「私が」ではなく「私を」と言うOVA巴さん。最後まで清里と剣心の間で揺れ、苦悩している様子が描かれているからこそのセリフだと思います。

そういうOVA剣心・巴さんの関係性に比べて、実写版は、より、巴さんから剣心への同情・愛情の芽生えが分かりやすく、かつあたたかに描かれている気がしました。

その同情の芽生えを演出するにあたって、すごく効果的だな〜と思ったシーンが、
桂が、巴さんに心を許し始めた(目の前で眠るようになった)剣心を見て、巴さんに「剣を鈍らせるな」と忠告するシーンでした。

刀を握らないと眠れない、腕を鈍らせるなと言われるほど最も過酷な任務を遂行していると知っていく
だからこそ、そういう日々の剣心を見る中で「あなたも犠牲者でしょう?」という気持ちが芽生えていく。

原作だと、桂はただ剣心は倒幕派の急先鋒を担っていると説明するだけ
OVAでは、桂はむしろ苦しむ剣心を思いやり「剣心という狂刀を収める鞘になってはくれまいか?」と依頼するんですね実写版・原作・OVAのシーンを比べると、実写版の2人の関係性にとって、この桂と巴のシーンってすごく納得感強いな〜と思いました

また、実写版で巴さんから剣心への同情・慈しみがささやかに、でも確かに感じ取れるたのは巴さんを演じた有村さんのなせる技なのかな〜とも。
抑えられた演技からでも、剣心へ向ける目やふとした表情から巴さんの複雑な心境の中にある愛情みたいなものが垣間見えたような気がします。

そして最後の十字傷をつけるシーン
個人的にはOVA版が好きですが、なるほど、このワンシーンだけでもこんなに見せ方で印象変わるのかとゾクゾクしました。

どちらも、巴さんが自ら傷をつけ「ごめんなさい」と言葉にしますが
映画版では剣心と手を重ね合わせ共同作業(傷をつけ罰を与える者と、それを受ける者)として描かれる
一方で、OVAでは、剣心は自分の手は添えず、巴さんにそっと自分の顔を差し出しているように見えます。

個人的にはOVAの演出が好きです。巴さんが自ら剣心に傷をつけ、清里への弔いをする行為って思うと、そっと顔を差し出すほうが、粛々と受け止めてる感じがして好きだなあと…



とまあ、こんなふうに原作・実写版・OVA比べると、ワンシーンとっても演出の違いで、キャラクターの関係性に違いがでて、色々な解釈ができ、とっても奥行のある作品でした
よかったです

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完全に余談(アニメ追憶編の作品ページ無いのでここに覚書)

今回実写版見て改めて思ったのは
OVA闇の部の長辰巳、業深きおじさんはやっぱり業が深い、情のあるおっさんだな〜ということ

OVAだと、散々剣心を殴った挙句に、最後は巴の小刀でトドメを刺そうとする
OVAの巴の小刀って、清里の遺品なんだけど
(ちなみに原作は、オッサンは肉弾戦の人でトドメも殴り殺そうとする+巴は自分で最後まで小刀を持ったまま+小刀は別に遺品という描写なし)


あのおっさん、殴り殺してもいいはずなのに、「わざわざ」剣心を巴の小刀で殺そうとするわけ
それは、巴の代わりに仇討ちしてあげようということなのか、剣心と巴への当てつけなのかはわからないけど(私は巴と清里への心遣いだと思う)
巴の小刀を使うことに意味を持ってるよね
けどそこで隙が生まれてしまって、巴に邪魔されてしまう
業深いわ〜と思った
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