青二歳

アップルシードの青二歳のネタバレレビュー・内容・結末

アップルシード(1988年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

85年OVA版の“アップルシード”。2004年版より主役たちがちゃんとSWATっぽい…警察官してる。
製作経緯についてガイナックスが下請けに丸投げとか色々言われていますが…その辺の細かい事情はよく分かりません。ただ古参のファンこそ軒並み低評価の作品。

大体アップルシードで事をやらかすのは理想主義者なのだけど、今作のテロはオリュンポスのシステムに非を訴える人間側の反逆でした。理想主義というより言ってることは至って現実的な訴えだった。
一方デュナンとブリアレオスの主役が彼ら人間の言い分についてまるで理解を示さない。テロリスト側の言いっ放しで終わり、デュナン達はこのテーマについてあまり明確な姿勢を表明しない。
その意味で本編の主役は、オリュンポスの理想・理念を力強く訴えるアテネと、オリュンポスの統制された社会が抱える歪みからの解放を求めるテロリストの二者。

ヒトミの遺伝情報がどれだけ大事かも分かりづらいので、山場はいまいち盛り上がらないし、SF設定も説明が少ないしオリュンポスという都市国家自体が要領を得ない。
そうした密度のある世界観を求めるなら、原作や2004年版以降を観れば良い。今作に魅力がある点はとにかくアテネに尽きる。このアテネがシリーズの中で一番好きですね。バイオノイドという人間に奉仕するために作られた存在として、なすべき事を為そうとする。そのためには、逆らう人間(テロリストやデュナンら従順でない者)たちを抑え込んでも止む無しという矛盾。彼女の中では多分それは矛盾ではない。果たして彼女にプログラムされた人間とはどんな存在なんでしょうか。
アテネこそオリュンポスというユートピア一切の諸問題が凝縮された存在だと思う。特にOVA版のアテネが一番分かりやすくて良い。

なお…原作が冷戦期に書かれたものなので、のち21世紀に作られる劇場版では冷戦崩壊後の世界観に合わせるため調整してたり誤魔化していたりするらしい。ならば85年版はそうした冷戦期の緊張感や終末感が満ちているのかも…と思ったらそうでも無かった。普通にSFしてるだけでした。
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