もすりん

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実のもすりんのレビュー・感想・評価

4.2
学生運動史に興味があるため、劇場公開時からずっと観たいと思っていた。主な関係者がまだご存命の今のうちに作るべき作品だったと思うし、貴重な当事者の声が聞けてよかった。
正直、学生運動史や68年当時の時代背景、哲学的な概念に馴染みのない人は、一見では内容を把握するのも厳しいだろう(あの場にいた東大生でさえも、全員が議論の全貌を把握していたとは到底思えない)。それでも、(たどたどしくも)必死に三島に食らいつく東大生の姿からは、今の学生間にはみられない熱気を感じるし、当時の雰囲気を感じるだけでも価値がある。
実際の討論の映像(抜粋)+関係者インタビューで構成されている本作品では、特に重要な部分だと思われる部分を抽出して論じている。特に後半の三島の天皇論(決して「昭和天皇」個人を崇拝していたわけではない)や、一見正反対の極右・極左の思想的な共通点、また、三島の思想が実際の行動・経験から生み出されたことを想起させる発言など、非常に面白く観られた。
三島の自決についてはあまり深く触れられていないが、芥氏(東大全共闘一の論客)が自決について肯定的に触れていたのも印象的。
全体的に満足できる作品だったが、個人的には討論部分に字幕があるとなおよかった(討論の書き起こしテキストなんかと突き合わせて見たい作品)。
音楽、タイポグラフィも良かった。
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