ほおづき

モールスのほおづきのレビュー・感想・評価

モールス(2010年製作の映画)
4.0
スウェーデンの映画『ぼくのエリ200歳の少女』をオリジナルとするハリウッドリメイク映画。
オリジナルの儚い雰囲気は残しつつもほぼ同じストーリーをなぞりながら、クロエ・グレース・モレッツの妖艶な魅力とハリウッド流のわかりやすい演出によってまったく別の作品になってる印象。
『ぼくのエリ200歳の少女』が芥川賞で
『モールス』が直木賞といった感じで
オリジナルの不気味さと精神性は失われてしまった気がするけど、彼女の小悪魔的な魅力とハリウッドお得意の派手さがあって、これはこれで美しい映画だったと思う。


原題「Let Me In」というのは
ヨーロッパの吸血鬼伝承にある、家主の許可なく敷地内に入れないという設定から来ているんだけど、そういえばヴァンパイア=美しいっていう概念っていつ頃から生まれたんだろう・・・
むかし萩尾望都っていうイニシエの漫画家にドハマりした時に読んだ『ポーの一族』で見たヴァンパイア像が今でも印象的に残っているけど、永遠に美しい姿のままの少年少女は人々の永遠の憧れなのかもしれない。


この映画を観て『崖の上のポニョ』のポニョとそうすけの関係性ってこの二人に似ていて実は美しいものなんだなって気づかされたけど・・・
改めてこの映画を思い起こすと、そもそもこの少女って人生の酸いも甘いも経験した(?)200歳の大ベテランなわけで、少年少女の儚くも美しい恋物語なんてまったくの幻想で
結局はいじめられっ子のかわいそうな幼い少年を言葉巧みにマインドコントロールして、自分の傀儡にしようとしてる人外の物語でしかないんだなって気づいた・・・・おぞましい。