顔も見せない姿も見せない、取材も一切受けなかったマルタンマルジェラが、初めて肉声で本音を語ってくれたドキュメンタリー作品。
クリエイティブな仕事をする人なら、多くの人はその心中の流れに深く頷く言葉ばかりだった。クリエイティブと商業的なものの狭間で両手を引っ張られている人なら、それをはらうヒントを見つけるかもしれない。それほど、正直でまっすぐな気持ちが語られていた。
また、『 We margiela 』では、周囲の人物がマルタンマルジェラの素顔や仕事ぶりについて話してくれていたが、本作品では、より身近で、彼をより深く理解する方々が語っている点についても興味深い。
というのも、彼らはマルタンマルジェラの一部分でしかないファッションデザイナーとしての側面だけでなく、マルタンマルジェラの創造性の強さを広く個性として捉えている。
だからこそ、本作品は全体として、マルタンマルジェラのファッションデザイナーとしての歴史の総まとめ的なものでありながらも、それは序章に過ぎず、アーティストとして新たに歩み始めた彼の未来への橋渡しの役割をになっていると言っても過言ではないと思った。
観終えたあとには、未来への希望がとてつもなく光って見える。
