富樫鉄火

パピチャ 未来へのランウェイの富樫鉄火のレビュー・感想・評価

3.5
正直いうと、イスラーム映画祭や、東京国際映画祭、あるいは一般公開でも、近年、本作と同じ「女性蔑視」を題材としたイスラム圏の映画があまりに多いので、新鮮味はあまりなかった(「衝撃」シーンがあるが、あの程度の描写は、イスラム映画ではやさしすぎる)。
だが、本作の特徴は、フランス支配下にあったアルジェリアが舞台であること(主人公の行動原理が「ヒジャブ拒否」の映画は、いままでにもあった)。フランス支配のおかげで、こういう複雑な国になってしまったことが、いくつかのエピソードで、ちゃんと描かれていた。
手持ちカメラ&ドアップの連続で、アルジェリアを半ばドキュメンタリのように描いている点も新鮮だった(画面の「揺れ」は、初老には、少々つらかった。また、ドアップばかりなので、その場の周辺状況がわかりにくいシーンがあった)。
出演の娘さんたちは、みんな魅力的で、とても親しみやすかった。
イスラム圏の映画を、あまり知らない方には、入門編にちょうどいいと思うので、ぜひ、観ていただきたい。
ちなみに、アルジェリアが舞台の映画といえば、独立闘争を描く『アルジェの戦い』(1966)が映画史上の名作だが、その後も、こういう問題を抱えているのかと思うと、ちょっと暗澹たる気分になった。
富樫鉄火

富樫鉄火