ほのか

ミナリのほのかのレビュー・感想・評価

ミナリ(2020年製作の映画)
4.0
今ここに居る自分たちは最良ではない。

いつかこの手に成功を掴むために、いつの日かあのヒヨコのオスのようにならないために、先が何も見えないままもがいてもがいて、ひたすらもがく。








⚠️微バレ
大したバレはないですが、まっさらな状態で観たい方は読まないが吉



パパ、ママ、アン、デビットそれぞれみんな少しずつ人としてあんまり好きじゃない人で、でも少しずつ共感してしまう人たちだった。

パパは今の家族を見ていない人。
家族の将来のために成功を夢見て勝負に出たいと望む。
映画の中のこういう人っていつか痛い目みるぞ…って思いながら見ちゃう。自分が選び取れる選択肢の中から信じられることを見抜き、信じられないことを捨て去る、その線引きは誰にでもできることにみえて、できない人の方が多い。

ママは信心深い。
自分の信じることを強要しがち(一方パパは頑なに祈ることを拒絶する、自分の力でって気持ちが強すぎるんだな)。子どもを守りたいという気持ちが強いけど、安心したい普通でありたいが暴走して子どもと向き合わない場面もチラホラ。

アンは達観してる、というより諦めてる。
文句も言わないし反抗もしない。
だけどそれは現状で満足してるからじゃなくて、この両親には自分が何をどう言っても響かないと諦めてるから。取り乱すこともないんやけど、それは冷静というよりは呆然としてしまうって感じがした。

こんなことってあんまりないんやけど、デビットの気持ちに1番入れ込んでしまった気がする。彼視点で進むシーンも結構あってそれがかなり大事にみえた。
特におばあちゃんのこと拒絶するシーンとか、わ、わ、わかる〜!ってなってしまった…。突然家族の輪に入ってきて偉そうやったり望んでもないこと押し付けがましくされたり何も分かってないくせにわかってますよの顔されたり栗とか栗とか栗とか(栗のシーンわかりすぎて…)私もああいうこと結構されて無理になったんよなあ。
まだ赤ちゃんに片足突っ込んでるようなおとこのこ。"新しく知る"、その衝撃の大きさは大人の比ではなく。それが彼の成長に加点されるものであればどんどん経験させてあげたいけれど、そうじゃないものの場合大人はそれをできるだけ見せないようにするべきやし、それでも隠し切れない時はできるだけ心に傷を負わないように、負ったらちゃんとフォローするようにしなきゃなあ。

家族であろうとも個人である。バラバラなことは当たり前。接点があって縁があって家族になっても、接点が一生重なってる保証なんてこれっぽっちもないわけで。家族になるとはこれから一生擦り合わしながら一緒にいる覚悟を決めるということ、なんかなとふんわり思った次第です。
その辺の表現、結構追い詰めて追い詰めて残酷なまでに追い詰めてたけど、最終的な選択の最初に戻るが上手くて暖かった。
家族じゃなくて農業を優先したって詰られたお父さんが家族を優先して、野菜を優先しようとしたのがお母さんなのめっちゃ泣いた…。ああこの最悪だけど最悪まで追い詰められたから見えたお互いの本質、その姿を見ることができたからまた手を取れる。諦めかけた一緒に歩く道を拾い上げることができる、と思った。


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filmarks様オンライン試写会にて。
久しぶりに観たい!!って強く思って応募した試写が当たって嬉しくて踊った
ありがとうございました!