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ミナリのわのネタバレレビュー・内容・結末

ミナリ(2020年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

映画の最後のシーンが終わって、あっ、ここで終わるんだという驚きが最初にあった。けれど、水辺に群生するセリの風景の清涼感とそこから静かに流れ出す音楽で、ふっと風が吹いたような余韻があって個人的にはいい終わり方だったと思う。

ラスト前の火災で茫然自失とするおばあちゃんを止めるシーンも心に残っている。ずっと過保護に育てられてきたデビッドに、"強い子だ"と唯一欲しい言葉をくれたのはおばあちゃんだった。そのおばあちゃんのところまで走って追いついて、今度がデビッドが手を引いて帰る。家族がお互いに作用して受け止めあっているのがよくわかるシーン。

エンドロールの最中どういう映画だったか考えていて、思い浮かんだのが塞翁が馬の話だった。ウワーッ曲者がきた、という印象だったおばあちゃんのやることが思いもよらず良く作用したり(特にデビッドの精神面)、はたまたよかれと思って行ったことが惨事を引き起こしたり、、、もちろんおばあちゃんに関する出来事だけでなく、アーカンソーに来たことで夫婦の仲に危機が訪れることも、この環境のおかげでデビッドの体調が良くなったことも。幸福や禍いは片方だけが訪れるものではなくて、それを受けいれていくことが人生なのかなぁと。

公式サイトによると、"タイトルの「ミナリ」は、韓国語で香味野菜のセリ(芹)。たくましく地に根を張り、2度目の旬が最もおいしいことから、子供世代の幸せのために、親の世代が懸命に生きるという意味が込められている。"
まさに今再出発しようとしているあの家族がミナリと重なって、ささやかな希望がじんわりと心に残る映画。感想を書いてより好きになった気がする。
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