ブラックユーモアホフマン

死霊館 悪魔のせいなら、無罪。のブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

3.6
まあ来月の『マリグナント』に向けた前哨戦ですわな。

でも思ったより酷くはなかった。特別面白くもなかったけど。

ポップミュージックを流しながら、長回しで家の中を歩く登場人物を追いかけるカメラワークなんかは完全に1作目の焼き直しで、良く言えばシリーズのテイストを保とうとしていたが、悪く言えば新鮮さは無かった。

冒頭、神父が到着するところの露骨な『エクソシスト』オマージュとかもジェームズ・ワンのセンスに似てはいるが。

何より一番、監督との解釈違いを感じたのは、ラスボスが人間であること。そこはあくまで悪魔でなければ。(悪魔ダジャレ)
そしてその悪魔のデザインが陳腐でガッカリ。ジェームズ・ワンならもっと面白いビジュアルにするはずだ。

悪魔に憑依された彼が殺人を犯してしまうシーンはちょっと面白かったけど、あれは音楽が流れたまま大事に至ってしまう方が面白いのでは、と思ったりちょいちょい惜しい。

彼=アーニーの彼女の弟(またジュリアン・ヒリアード君だよ!出過ぎ!)はその後も出てきたりするものの、両親の存在が極端に希薄だったり、またウォーレン夫妻にも娘いたはずだよね?どこ行った?(『アナベル 死霊博物館』を観てないんだけど関係ある?)とか人間ドラマの描き方も雑に感じた。

「悪魔のせいなら、無罪。」というサブタイトルにもっと準じて、”法定モノ”になっていたら面白かったのにな。裁判のシーンを繰り返すことで構成を整えながら、如何に悪魔の存在を証明するかというロジカルなドラマに、ホラーの要素が加わってくるというバランスだったら今までにないホラー映画になったと思うのに。

キャリー・ジョージ・フクナガの「TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ」や、デヴィッド・フィンチャーの『ゾディアック』、ドゥニ・ヴィルヌーヴの『プリズナーズ』のような不気味さを、少し感じたけど物足りず。どうせ人間をラスボスにするなら、そこをちゃんとしてくれたら。

しかしホラー映画をシネコンで観ると、まあ相変わらず客層が酷いんだけど(今日は比較的マシだった)、でもやっぱなんか感動したな。ホラー映画っていうのがこうやってまだ若いカップルとか学生グループとかの娯楽の対象になってるんだっていうことが。この人たちがここに怖がりに来てるっていうのが。映画にはまだ人の心にリーチする力がある!ということをかなり明け透けな形で実感する。まだ世の中が映画に何かを求めてくれてるんだってことに純粋に感動する。

【一番好きなシーン】
アーニーが殺人してしまうところ。