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ディナー・イン・アメリカのYouKeyのレビュー・感想・評価

ディナー・イン・アメリカ(2020年製作の映画)
4.3
 Filmarks様のご厚意でオンライン試写に参加させていただいた。

 "RED, WHITE and BLUE STRIPES!" こういう作品を観たかった!期待以上の痛快さ!渋谷のミニシアターで当時情報をつかむためアンテナを張り巡らしていた仲間と映画を観ていた日々を思い出させる勢いとエネルギーに満ちた作品。そうは言っても今は2021年。あの頃観た作品のセリフに出てくる表現を使って会話することはもうないし、創られる作品からしてある一定の線を超えることがないよう『配慮』されている(でなければサンダンス国際映画祭に出品されないだろう)。それでも、これは場内飲食が許されるならば「トゥルー・ロマンス」のクラレンスとアラバマのようにソーダとポップコーンを手に観る作品。家でのオンライン試写観賞だった故、タコスのデリバリーを注文して食べながら観たら大ハマり。

 Twitterのタイムラインで見かけた日本版ヴィジュアルが好み、そして「ディナー・イン・アメリカ」というどこか皮肉めいたタイトルが気になったのに加え、たまたま8月のさなか数日涼しくなったときにデヴィッド・ボウイを思い出し、何かボウイが出演している作品で笑えるものをとベン・スティラーが間抜けなランウェイ合戦を繰り広げる「ズーランダー」を観て笑い、この「ディナー・イン・アメリカ」にも関わっていると知ったのが観ようという動機を強めた。

 舞台が中西部というだけでユナイテッド航空のハブ、オヘア空港がありブルース・ブラザースを生んだイリノイ州シカゴ以外には住みたくないと感じてしまうのはいささか偏見だろうが、自分は車を持っていないから公共交通機関のバスを待たなければならない、バスを待つ間に執拗な嫌がらせを受ける、そのバスは日曜日に運休、短大を出ても実家住まいで両親から干渉されながらアルバイト、この連続で大都市へ出られずラジカセ(!)で聴く音楽が唯一の楽しみという日々では、東京にいる自分のほうがよほど外の世界に飛び出して行っているとすら思えてくる閉塞感。エミリー、サイモンそれぞれの家で供される『ディナー』もテイクアウトか冷凍食品か、機能不全家族でなくとも結局最後は家族と一緒でない一人で食べる刑務所のディナーが一番(実際アメリカの刑務所では服役者をイライラさせないために肉を少なくするか出さないかだそう)というオチがつく。

 かつて「トゥルー・ロマンス」で感激した世代や、甘ったるいラブコメよりも疾走感と若干の暴力とリーガル・ドラッグとラウドなロックが絡み合うタッチが好きな方、携帯電話やスマートフォンが出てこない時代でもダイナーや立体のテレビが出てくる時代のアメリカが好きな方はぜひ!
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