KokiUrakami

俺のシテがやられるのKokiUrakamiのレビュー・感想・評価

俺のシテがやられる(1997年製作の映画)
4.0
「働く人のデモは認められるけど、持たざる者のデモはただの暴徒である」っていうとこに痛みを感じた。人権の有る無しは職についてるかどうかなのか?じゃあ国は労働者のために政策を作ってるのか?職のない俺たちは人ですら無いのか?
同じ学校出たアイツは仕事してる。自分が仕事が無いのは失業率のせい。失業率は国のせい。資本主義のせい。
うろついてる不良はまさしくそんな国が生んだ腫瘍。彼らだって17時からやることなく外うろついてこのままで俺は良いのかって葛藤する日々を送ってるし、葛藤できる善良な心を持ってる。そこでHIPHOPみたいなアートに昇華出来る奴もいれば、アートカルチャーに出会えない奴もいる。アートに出会えなかった同士が抗争し若くして撃たれて死ぬ奴もいる。こういう奴らに対して自業自得とか意見する人はいるけど、この一連の事実を踏まえたら僕は「不遇だ」としか思えない。「頭を使えば成功する」なんていう簡単な状況では無いし、「不良してたから死んだ」なんてそんな軽い命では無いのだ。

車を燃やす奴もいれば、車を盾に銃撃する奴もいれば、パトカーに車を突っ込む奴もいて、そこの描写は面白かった。ブレイクビーツでの銃撃戦も切なく映った。
今は警察は善良な人が多いだろうし、日本はとりわけ暴力的では無いけど、国の言うこと聞いて、取り締まってくる警察に腹が立つ、ギャング的ロジックも作品を見てるうちに分かってくる。

90年代とは違って、暴徒が一般的な表現で無くなった2020年代は、持たざる者にとって秩序と平穏の板挟みのような気がした。
またHIPHOPのように持たざる者に言葉を持たせるカルチャーが増えれば良いし、それに出会えれば嬉しい。
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