くろさわ

あの頃。のくろさわのレビュー・感想・評価

あの頃。(2021年製作の映画)
3.8

「あの頃。」とは夢中になるモノがあること、それを肯定してくれる仲間がいることは人生の宝だと教えてくれる映画です。


実話を基にした作品で、主人公の劔(松坂桃李)はバンドマンとして夢を追うが上手くいかず、腐りかける。そんな時に友人からもらった松浦亜弥のDVDをみて、アイドルにハマる。そして、偶然参加したハロプロイベントで、ハロプロオタクと出会い、大人の青春時代を生きていく。

学生の頃は、卒業という強制的な別れイベントが発生するが、社会人には卒業はない。
もし、同じモノに夢中になれる人と出会えば、それは一生の友人となるかもしれない。

仕事もろくにせず、お金もない、でもアイドルを推す気持ちなら誰にも負けない劔や仲間たち。
そんな姿を見ていると、周りの目を気にせず、ただ純粋に好きなモノに夢中になれることは最高に幸せなことだと痛感させられる。

社会人になると、将来を考え、損得だけを意識して生きている人もいる。
そういう人に限って、趣味がなく、楽しくないとぼやく者が多い。

今がつまらない人や趣味が無い人にこそ、見てほしい。
夢中になるってこんなにも素晴らしいのだと。肯定してくれる仲間がいるのってこんなに幸せなんだと。


青春は学生のものだけでは無い。
大人にだって、青春謳歌できる。
好きなものは周りの目を気にせず、夢中なっていいし、仲間ができればそれは一生の宝だと思う。


キャスト7人のバランスがすごい良い。
主演の松坂桃李含め、仲野太賀、山中崇、今泉作品常連の若葉竜也、芹澤興人、ロッチのコカドケンタロウ、大下ヒロト。

男子校みたいなノリが行われており、見ていてもどこまでがセリフ有りなのか、どこまでがアドリブかが分からなくなるほど、自然なやりとりが、見ていて心地良かった。

7人揃って衣装も揃えて、歩くシーンは最高にかっこよく。ラスト、舞台上で出ない音程を無理に歌う7人の姿は感動的だった。

初めて劔がイベントに行ったときに、話されていた話題が、ラストにリンクしているのは超感動的。
マジで、最高です今泉力哉監督。


あと、ハロプロ内の変化は激しいため、映画化までに何回か脚本修正されたらしい。
凄いなアイドルの世界、そしてアイドル戦国時代と言われている今も一線にいるハロプロの凄さを改めて学んだ。

今作の「ザ☆ピ〜ス!」「恋ING」は神曲だなと心に刺さった。映画みてから、毎日聞いている。

そして、タイトルの「あの頃。」
映画を見る前までは、過去を美化する映画とイメージしていたけど、見た後は全く印象が異なった。

あの頃があったからこそ、今が一番楽しい。
十人十色のあの頃があると思うけど、過去を大切にしながら、今を一番楽しく生きたくなる映画。


今泉力哉監督の次作、4月公開予定の「街の上」でも楽しみです。