映画狂人

あの頃。の映画狂人のレビュー・感想・評価

あの頃。(2021年製作の映画)
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恋愛映画の旗手=今泉力哉がハロプロに青春を捧げた男達の悲喜こもごもを描くオタ活映画。
自分は特にハロプロにハマる事は無かったけれど世代なのでTVを付ければ毎日必ず誰かしら出ていたし、小学校の給食の時間にはモー娘。の「LOVEマシーン」「恋愛レボリューション21」等が連日エンドレスに流れ続けていた。
00年代初頭の日本人の記憶の片隅には必ずハロプロが居たのだ。
推しが居る幸せとは擬似恋愛のようなもので、坂道にハマった今なら彼等の気持ちが少し分かる気がする。
「何かを好きになる事で生きている実感を得る」
趣味に生きる人間にとっては共感出来る部分が多いのではないか、恋愛に限らず夢中になれる事があるって素晴らしい。
流石にオタ芸は冷静に客観視すると見ていてキツいものがあったが、どんな形であれ何歳だろうと青春を謳歌するのは人生にとって重要な体験になる。
さて今回、主演の松坂桃李を食う存在感を示したのが仲野太賀、良い作品には必ず仲野太賀が居る。
他には若手演技派のひとり若葉竜也もやはり巧い、眼の動きや挙動を通して役柄の実存感を飛躍的に高めている。
松浦亜弥に扮した山崎夢羽の本人かと見紛う程の再現度の高さには心底驚いた、本当に似てる。
今泉作品を観ていると荒んだ心が浄化されていくようで今回もまた「居心地の良さ」を感じた、特異な作家性を持たないが故の「共感力」の高さこそが今泉力哉の最大の魅力。
人の生き方を決して否定せず人生を優しく肯定してくれる、間違いなく今の時代に必要な監督である。
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