原作は未読。
冒頭のチープなVFXで腰を折られる。なぜリアル思考のVFXにたどり着くのかが疑問。わざわざ中途半端にしか到達し得ない描写に手を出す意味が理解できない。
次にキャラクター描写。寂しさとクレジットされるキャラクター3人が干渉こそすれど、主人公のいる現実世界にまったく影響してこない。寂しいという現象が起こるのは、そこに寂しさが「ある」からであって、実体がないからと言って空白ではない。寂しいという現象は人間にどのようなものをもたらすのかというユーモアに欠ける。
さらに、その3人の描き分け、キャスティングも下手に感じる。歪であることの面白さはあれど、まとまりのない構成だ。生きる上での寂しさ以外の現象がもたらすものは描けているが、本題は最後まで寂しさであることが不可欠だ。
『ジョジョ・ラビット』は最後までナチスを描いたし、ヒトラーが主人公に与える影響は現実上で表面化できているため、キャラクターの身体性が増す。
蒼井優演じる過去パートとの親和性も低い。本来なら田中裕子と蒼井優の邂逅がこのタイミングでなされたことに浸りたいところだが、2つのシーンの配分、構成のバランスが酷く、この幸運をことごとく殺す。
雲の乗り物に乗って和室をカメラに向かい進んでくる子供の神様のシーンは良かった。敷居の段差で乗り物がガクンとなるところはチャーミング。
水彩画のアニメパートも素晴らしい。担当したのは四宮義俊。近年の劇場版ポケットモンスターシリーズ、『木の葉の庭』のポスタービジュアルや、『この世界の片隅に』ですずが描く波のうさぎなどの水彩画パートを担当。本作でも水彩タッチで描かれるマンモスと原始人が躍動し、滑らかに描かれている。素晴らしい。
『モリのいる場所』でダメだった点を改善せずにここまで来たのが本作の結果であろうとも感じる。