まつけん

エイブのキッチンストーリーのまつけんのレビュー・感想・評価

3.9
エイブのキッチンストーリー:2019年 アメリカ/ブラジル 85分
素直に感動する映画でした。幸せな気分になれる!
都内だと新宿のシネマカリテか渋谷のシネクイントくらいでしかやっていないのが勿体ない。。有楽町のヒューマントラストシネマでもやって欲しい映画。
料理映画って個人的には結構当たりはずれあるけれど、「シェフ 三ツ星フードトラックはじめました」はAmazonプライムとかでも観れるので是非!この映画も、エイブのキッチンストーリーも、料理が家族の絆を作り上げていくという内容。

◆あらすじ
イスラエル人の母とパレスチナ人の父を持つエイブ(NY在住)は、文化や宗教の違いから対立する家族に悩まされるなか、料理を作ることが唯一の心の拠りどころだった。誰にも自分のことは理解してもらえないと思っていたところ、世界各地の味を掛け合わせた「フュージョン料理」を作るブラジル人シェフのチコと出会う。
フュージョン料理を自身の複雑な背景と重ね合わせたエイブは、自分にしか作れない料理で家族を一つにしようと決意する。果たしてエイブは、家族の絆を取り戻すことができるのかー?

いや、何がすごいって、料理映画じゃないですよこれ。あらすじにあるように、イスラエル人=ユダヤ教、パレスチナ人=イスラム教 という分かりやすい構造で、事あるごとに揉める訳です。食べることが出来るものや、新年のお祝い、クリスマスをどうするか。
お父さんお母さんは、子どものためにも宗教を捨てたものの、両家の祖父母が食卓を囲むとすぐに言い合いをする。やれ、ユダヤ人が土地を奪ったことで、パレスチナ難民が生まれたんだとか、顔を合わせればそんな話ばかり。エイブは、エイブラハムが本名。人によってアブラハム(ユダヤ教)だったり、イブラヒム(イスラム教)だったり、、、だから本人はエイブと呼んで欲しがる。子どもの葛藤が分かりすぎてズシズシ来る。エイブの誕生日であっても、ずーっと口喧嘩。結果夫婦もそのことが原因で仲が悪くなっていく。。エイブは自分の所為だと悩むし、何か出来ないかと悩んでいく。。
ちなみに料理はあまり美味しそうなそそられるものはなかったですw そして、今ご飯食べる?!って突っ込みたいところも合ったりします。でも、そんなの気にならないくらい、感動します!

イスラエルって、ユダヤ教の人75%、イスラム教の人15%、キリスト教2%程度、その他って感じの構成らしく、ユダヤ教でも規律をきちんと守る人は20%程度でしかないらしい。それでも、今までは、ユダヤ教徒の子どもとイスラム教徒の子どもが一緒の学校に行くことはなかったし、別々のコミュニティだった。ただ、最近はユダヤ人とアラブ人が半々になるようにクラスが構成されている学校があって、先生も2人、ユダヤ人の先生とアラブ人の先生がいる。学校ではイスラエルの公用語・ヘブライ語とアラブ人の使う言語、アラビア語を一緒に教えている。高校では、日本人だとびっくりするようなディベートが…。イスラエルの建国記念日は、ユダヤ人にとっては民族の悲願を成し遂げたおめでたい日ですが、アラブ人にとっては住んでいた場所を追われた悲劇(アラビア語で大惨事=ナクバ)の日。この学校では、ユダヤ人の生徒がアラブ人の立場、アラブ人がユダヤ人の立場にたって、ディベートが行われます。お互いの歴史認識を深く知るために、重要な授業になっていると。学校は「お互いのことを知らなければユダヤとアラブの対立は解消されない」という思いを持った保護者たちが声をあげ、およそ20年前に設立されました。しかし、こうした共存を志す動きが、それを快く思わない過激派の攻撃を受けたこともあります。実際イスラエル全体だと、ユダヤ人とアラブ人の間の溝は深まるばかりで、共存しようという考え方は少数派という。ただ社会的には少数派とはいえ、学校への関心は高まっているようで、全校生徒700人の学校に対して、ことしは1200人が入学待ち。さらに、小さな校舎から始まった学校の数は、この20年間でイスラエル国内6か所に増え、現在、7か所目での開校準備が進められているという。
これって素晴らしいことだし、エイブの家族のように、イスラム教とユダヤ教の夫婦だって出てきているんだと思う。ようやく囁かれてきたダイバーシティやインクルージョンな環境にどんどん若い人たちが当たり前のようになって、宗教も良くも悪くも薄れていって、、いつか今ある宗教戦争って本当になくなるんじゃないか?!って思わせてくれた映画でした。子どもからみたら、全然変わらない、宗教の前に家族なんだから。そういう子たちが次の時代を作っていくんだなと。新しい問題も発生するかもしれないけれど、数百年、数千年のわだかまりから、新しい時代が出来上がっていく過渡期なのかもしれないなぁ。
(最近、その対立の怖さや寂しさで、善悪のある映画が多かったけれど、今回観たいにもっと根本の家族、人というところに戻っていこうとする映画って素敵だね)
まつけん

まつけん