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泣く子はいねぇがのmoeのレビュー・感想・評価

泣く子はいねぇが(2020年製作の映画)
3.7
なかなか旅行に行きにくいこのご時世、ご当地色が強い邦画をついつい観たくなる。
舞台は秋田、男鹿半島。

父親になれず秋田から逃げ出し、東京に何かあると思って暮らし続ける主人公のたすく。
そんな彼と親友・志波の会話に、自分も男鹿半島の海岸にぼーっと座ってるような気分で耳を傾ける。

コロナ禍でも散々話題になった地方と東京の差異、地方移住への関心の高まり、人口過密地帯である東京に住み続ける意味。

一見何でもあるように見える東京には、実は何もない。私たちを取り囲むモノたちが多いだけで、みんな傍らを素通りしていく。
それに比べて自分たちの地元には秋田には、何もないけど、全てがある。

シンプルな言葉でたすくに語りかける志波のキャラクターは押し付けがましくないのにどこか達観していて、でもたまに幼い表情が魅力的に見えた。


結局たすくは最後まで父親にはなれなかったと思う。

なまはげは神様だから、何をしてもいいんだと言った人が劇中にいた。

自分ではない、なまはげの、神の姿を借りればこそ、たすくは自分に付き纏う「父親」というふわふわした概念を蹴り飛ばして、やっと子どもに向き合えたのだ。
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