ぽめ谷園

泣く子はいねぇがのぽめ谷園のネタバレレビュー・内容・結末

泣く子はいねぇが(2020年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

折坂悠太の主題歌をきっかけに鑑賞。
太賀演じるタスクが、大人になる覚悟を持てないまま(立場としての)父になってしまう話。

誰もが親になったからと言って精神的に大人になれるわけでは無い。それを前提にしてもタスクは何も分かっていなかった。
決して悪い人では無いが、お金を貯めると言って、定職に就くわけでもなく、小遣い稼ぎのようにちょこちょことお金を集めては箱に入れる。2年経ってやっとすることでは無いだろうし、付け焼き刃に過ぎない、ある種の罪滅ぼし的行動が、幼稚に感じられる。

タスクが大人になるのを放棄してから、自身の居場所が無くなっていることも気づかないまま、娘の幼稚園へ演劇をこっそり観に行く。しかし我が子の顔が分からない。時が止まっているのは自分だけだと、嫌でも認めざるを得なかっただろう。

父として娘に会う権利の無いタスクが、ナマハゲとして娘に会いに行くラスト。
父として会うのも許されないが、ナマハゲに扮するのも許されないタスクにとって禁忌的な行為。
それでも娘に会いに行く。

新しい父に抱かれた娘にナマハゲとして対面しなければ、娘の顔を認識することさえできない悲痛の叫びと、ナマハゲとしての子を想うための叫び。地域としての父親では無く、完全なるエゴで伝統文化を利用する身勝手さが情け無い。

それでも、子を守る側に回れるのは新しい父の役割で、自分はトラウマを植え付ける悪者になるしか方法がない。叫んでいる時の顔は見られなかったが、泣いているんだろうな。
「泣く子」は娘でもあり、タスク自身でもあるのだろうなと思った。

劇中の台詞は多く無く、ゆったりとしているが、このラストで全てを持っていく感じ、凄く好きだった。
太賀•吉岡里帆の演技と、折坂悠太の主題歌、ナマハゲにヒントを得た感性、全てに脱帽。
こんなに好きなラストシーンはないかも。

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