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トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャングのILLminoruvskyのレビュー・感想・評価

3.8
原題『True History of the Kelly Gang』(2019)

監督 : ジャスティン・カーゼル
脚本 : ショーン・グラント
撮影 : アリ・ウェグナー
編集 : ニック・フェントン
音楽 : ジェド・カーゼル
出演 : ジョージ・マッケイ、ラッセル・クロウ、ニコラス・ホルト、エッシー・デイヴィス、他

ピーター・ケアリーの小説『ケリー・ギャングの真実の歴史』を原作とした、19世紀のオーストラリアで権力と差別に立ち向かい、極悪人とも英雄ともいわれる反逆者ネッド・ケリーの真実に迫ったピカレスクヒューマンドラマ映画。

ジャスティン・カーゼルが、時代考証にとらわれないビジュアルと現代性とパンク精神を加えた新解釈を盛り込んだ、従来の伝記映画なら「義賊」としてのケリー・ギャングを描くであろう部分を排除しジャスティン・カーゼルの持つテーマと表現でネッド・ケリーを描いた作品。

富裕層が警察権力と結託して、元囚人とその子孫である貧困層を厳しく弾圧していた19世紀のオーストラリアを背景に、ネッド・ケリーを犯罪に走らせた現実への苛立ちと反抗、暴走と悲劇を、ジャスティン・カーゼルの作家性テーマともいえる「貧困と犯罪から抜け出せない負の連鎖」として、現代社会の格差の拡大や、踏みつけられている弱者の鬱屈や怒りと重なる作りに落とし込んだ語り口はジャスティン・カーゼルらしくて好印象でした。
あと、映像ルックも非常に良かったです。
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