すこやか

ポゼッサーのすこやかのレビュー・感想・評価

ポゼッサー(2020年製作の映画)
4.0
特殊装置で他人の脳に憑依し、遠隔操作で体を操作することで殺人を実行する組織の女性暗殺者が、依代との同期にズレが生じて機能不全を起こす。身体の疲弊や精神の乱調、あるいは自他の境界を失い混濁する自我のありようといった哲学的主題を描くと聞けば、たしかにサイバーパンクをはじめ、ありふれた作品であるように思われる。

しかし、デイヴィッド・クローネンバーグの息子ブランドンが演出する、ゴアでフェティッシュ、それでいて気取りすぎず、どこか表層的で乾いたノワールな雰囲気の充満する映画世界は、淫靡かつ猥雑な魅力十分で惹き込まれる。

同監督の新作『インフィニティ・プール』、デイヴィッドの『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』、あるいは『TITANE/チタン』など、サイバネティクスからトランス・ヒューマニズムに至る、人間/機械、精神/身体のポストヒューマン的相関主義を扱う作品群が、これら主題をいかに思考を巡らせ、表象するのか、SF映画の新たな潮流に注目させられる。
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