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「ポゼッサー」に投稿された感想・評価

Eike

Eikeの感想・評価

4.0
デビッド・クローネンバーグの息子さん、ブランドン・クローネンバーグの作品。
内容は一応SFジャンルの作品だが流血の度合いが高く、そのためかホラー系の作品として扱われることも多い模様。
他人に自己の意識を寄生してその肉体を支配することでターゲットに接近し、標的の命を奪う「暗殺者」の物語。

しかしSF色を強調する気配は無く、ヒロインを中心とした心理サスペンス映画と言って差し支えない内容になっております。
他人の意識に干渉するという設定はノーランの「インセプション」と相通じるものを感じましたが、こちらは相手の肉体を支配して犯罪に利用するという点が特異。
また主人公ターシャ・ボスが自分の肉体に意識を戻す際にはホストの命を奪い(「自殺」させる訳ですね)、その痕跡を残さないという徹底ぶり。
かなりハードモードの設定だがオリジナリティは十分。
その上で見方を変えれば、人気の「入れ替わりテーマ」の一本としてみることも可能です。

本作の特徴はまずそのシリアスさ加減と流血の度合いだろう。
この設定なら娯楽アクション映画に仕立て上げることは容易なのだが主人公を見かけはごく普通の中年女性に設定し、そのアイデンティティが過酷な「業務」によって危機を迎える様が良く言えば「リアルに」、悪く言えばかなり「地味に」描かれて行きます。
この暗殺業務はある企業による特殊なサービスとして顧客に提供されているのだが、その実行には特殊な体質と精神状態を備えた適性が必要で、ヒロイン、ターシャ(アンドレア・リースボロー)は組織内でもトップクラスの凄腕。
しかし幾度も他人の肉体に侵入し、その精神に寄生してきたことによる疲弊と暴力行為の実行と目撃(他人の肉体による行為なので)を続けてきたことが原因でPTSDを発症。
自分の肉体と記憶そして精神のバランスが崩れ始めており、家族を含む周囲の環境に対して日ごとに違和感を覚えるように。
そして家族に対してすら突発的に暴力衝動にかられる傾向も見られるようになっています。
そうした状況に危機感を覚えた彼女は業務から離れる事を考えるのですがその前に大きなヤマを依頼されることに。

暗殺の対象はIT界の重鎮ジョン・パース(ショーン・ビーン)。
彼女はその人物の一人娘エヴァの婚約者コリン・テート(クリストファー・アボット)に寄生し、パーティーの際にパースを仕留めることを狙うのだが…。

本作、SF色を抑えていることからビジュアル面に関してはインパクトが若干足りない気もするのだがその分をバイオレンス描写の圧力が補完しており、物語の印象は意外と濃くなっております。
ヒロインがその行動の過激さとは裏腹にむしろ地味な容貌・控えめな性格の人物として描かれていることもあって暗殺行為を中心としたサスペンスと言うよりは次第に混乱の度合いを高めていく彼女の精神の均衡が崩れる様を見せることに重点が置かれていてかなり特徴的な作品になっています。
ターシャはコリンの肉体を奪い、婚約者エヴァを通じてパースに接近するのですが、暗殺に成功したかと思われたのもつかの間、最後にコリンに自ら命を絶せることに失敗。
結果としてその肉体から脱出することが出来なくなってしまいます。
この後半以降の展開こそが本作のメインとなる部分なのですが、この流れならばその気になればいくらでもアクションやサスペンス描写を盛り込むことは可能なはず。
しかし本作のアプローチはその方向には向かってはいない。

ターシャがコリンの肉体にとどまり続けていることでそのコントロールが乱れ、次第にコリンの精神も主張を強めて浮上してくることに。
結果としてクライマックスに向けてのこの人物の行動が混乱したターシャによるものなのか、肉体の支配を取り戻そうとするコリンによるものなのかも次第にはっきりしなくなってくる。
見る側からすれば混乱し、展開を追うのが億劫になってしまいそうなものだが本作の場合、どちらかと言えば静かな作品ながら主演の二人の熱演もあって最後まで関心は途切れませんでした。
結果的には陰鬱としか形容のしようがない作品となっておりますが着地点も妙に納得できるものになっております。
リースボロー女史の虚無を抱えた表情の演技にも求心力がありますが、ターシャが寄生した状態のコリンを演じるアボット氏の演技も見どころ。
男性の肉体に女性の精神が宿った、ありがちなトランスセクシャルな人物のポートレートを思い浮かべそうですが、この作品ではターシャがコリンの中に寄生しつつ男性の振りをしているという設定な訳で、アボット氏のどこか違和感を感じさせる演技もお見事でした。

この内容からすれば「ホラー」の印象は薄いと思われるのだが暴力描写のタッチ(分量が多い/スプラッター的という意味ではない)が生む殺伐とした雰囲気故に妙に寒々とした作品になっております。
当然賛否は分かれるでしょうが見ごたえはあります。
horahuki

horahukiの感想・評価

4.3
「私」は誰…?

他人の脳みそに侵入&遠隔操作する技術を使って利益を上げる極悪企業もの。主人公は才能を見込まれ、自己の意識を他人に憑依させターゲットを粛清するために雇われた連続殺人鬼。しかし憑依した相手と自己との境界があやふやになり始め、次第にアイデンティティが失われて行く恐怖を描いたSFホラー。

クローネン息子バーグの長編2作目。面白いと教えていただいた『アンチヴァイラル』が良かったのでこちらも!セレブや資本家による、ある種の集団洗脳状態に陥った大衆とシステムそのものを皮肉り病気だとした社会-個人の映画である前作と同様な要素を加えつつも、よりパーソナルなアイデンティティの物語へと舵を切っていて好みなやつだった!

憑依の演出が素晴らしく、蝋か何かで作った人体が徐々に溶解していくようなグロテスクさが堪んない!超未来的なテクノロジーを扱いながらも前作同様、スクラップ置き場にありそうなアナログな装置を利用するのも好き!

スムーズかつ的確に憑依ルールを観客に説明するだけでなく、与えられた銃を選ばずにあえて刃物での滅多刺しを選択する主人公の内面的衝動を予感させるプロローグ。そして幼い頃に自分で殺した蝶の標本をもって自己同一性を認識させ、それと対応するラストの彼女の言葉との差異によって何が彼女のアイデンティティだったのかを炙り出す。

『アンチヴァイラル』はセレブに限定していたけれど、本作は人が生きていく上であらゆる事柄により影響を受けて作り上げられる「自己」という仮面と、生来の原石的アイデンティティを対比させている。主人公は家族に会う際にも、仮面としての「自己」を演じるための準備運動をするかのように「ただいま」の言葉を反復練習する。その際のシンメトリーを絶妙に崩した自宅の配置にも、あの場所は彼女の真意ではなく仮面であることを印象付けている。実際に仮面も付けてたし!🤣

そして、子供の顛末等によってそれすらも仮面なのではないか…といったニュアンスまで漂わせてくるところに本作の嫌らしさがあると思う。多くの人が信じさえすれば虚偽が真実として定着してしまう現代において、真の自己を知る術などもう何もない。

そういう意味において本作は『パーフェクトブルー』で今敏監督が提示した事柄を反復している。仮面を「演じる」ことに自覚をもったあちらとは違って、本作は仮面を仮面だと自覚することの不可能性にまで手を広げているために遥かにネガティヴな話になってはいるけれど。パパバーグとずっと比較されてはいるけれど、息子バーグは全く違うところを志していると思う。いやでも結局一緒かな?🤔
pherim

pherimの感想・評価

3.4
遠隔で人格を乗っ取り合うSFバイオレンス。

父の呪縛が色濃いブランドン・クローネンバーグ新作で、生理へ訴えるグロ描写を理知のフレームへ載せようとする試みに息子なりの格闘をみる。結果感覚的ヤバさの割に突き抜け切れない、しかし妙に飽きさせないB級良作仕上がる。
イワシ

イワシの感想・評価

3.3
意思を剥奪され他者に強制された殺人は『パララックス・ビュー』を、相貌の変貌による自我と来歴の混合はフランケンハイマー『セコンド』を連想するが、映画よりも別ジャンルのアートを志向しているように感じる。露骨な性描写と過度な暴力はポルノグラフィー的に楽しめる。
グロテスクな身体破壊、血の量、容赦ない暴力。それなりに楽しんだが、過剰なフラッシュバック(映像)とかフランシス・ベーコンの絵画っぽい歪な顔面とか、親父クローネンバーグがヤりそうで手を出さなかった遊びをそれが一線を越えた表現だと見誤り、安易に取り入れてしまっている。前作もそうだが息子クローネンバーグの映画はどこかあざとさ(ドヤ顔)が見え隠れしていて、異常な世界観を切り拓いていくにはまだまだ思想が足りない。息子クローネンバーグは一度、頭でっかちで小賢しいホラーから離れてもっとベタでストレートな「映画」を撮るべき。ジェニファー・ジェイソン・リーが出演しているのはどう見ても『イグジステンズ』への目配せ。画の作りはA24っぽい流行りの感じ。終盤の撃ち合いが日本での公開を難しくしているのかもしれない。

何でか飽きない。
映像がアートみがあって
気づいたら最後まで見てた。
終わった後に凄く長い映画を
観たような疲労感がある。
間延びしてた訳じゃないし
別に104分ってゆう

SYFYすぎぃ~
クローネンバーグ御大のご子息ブランドンによる長編二作目

前作『アンチヴァイラル』は大傑作で、思い出すだけで震えるくらいなのですが、ソフト高値になってて買えない(泣)

まあこちらも日本版出ていないからアンカット版Blu-rayを知らぬ間にポチっていたので、きっと前作も泥酔してポチることでしょうw

で、今作はというと……
唯一無二の存在感『マンディ』のアンドレアさんを起用、美しくも容赦ないバイオレンス描写は良かった☆

が、ラストよ。。。
滅茶苦茶モヤるわぁ~(。´Д⊂)

英語鑑賞
英語字幕あり



殺し屋ターシャ(アンドレア・ライズボロー)。

他人の意識に侵入し、操り、標的を殺すというやり方で生きて来たが、流石に病んできている。

が、次の仕事を引き受けた。

大企業社長ジョン(ショーン・ビーン)とその娘エヴァが標的。
エヴァの恋人コリンの意識に侵入して殺すことに。

ターシャは病みながらも仕事を完遂させるが、コリンの意識が戻ってきて……



これでプロの殺し屋なんかいwww?!

他人を操るとはいえ、殺し方が素人過ぎるんですよ。
ほぼメッタ刺して。

まあグロな人体破壊と大量血糊が拝めるから良いのですが、これ殺し屋設定にしなくても良かったかも?

ショーン・ビーンも大変な目に遭います、いつも通りだけどw

海外版だからかボカシも一切なく、チンコぼんぼん出してセックスしてたり、女性もアソコぱっかーんしてました(笑)

人体ドロドロ溶けシーンは流石クローネンバーグ家のセンスでしたね☆
気持ち悪いのに美しくて見惚れちゃう!!

が、前作の方が好みだったなぁ~
ちょっと残念。。。
中原昌也大先生が大絶賛していた+クローネンバーグの息子の監督作とあって期待値ぶち上げたが、普通…。まあまあ面白い。
ヴィルヌーヴとかヨルゴス・ランティモスみたいなスタイリッシュなショットが続き、ストーリーがダラダラと進んでいくので眠くなる。「他者への憑依」という扱っているテーマ自体はかなり面白いが、もっとグチャグチャに感情剥き出しで描いて欲しかった。人体破壊などの残酷描写は抜かりなくやってるのでよかったが、ラスト30分くらいまではぶっちゃけテンポ悪すぎとしか思えない。日本公開されないのはガキが銃殺されるシーンがあるからか?ただ、ヴィルヌーヴが同じテーマで撮ったら、恐らくさらに眠くなる+つまらなくなりそうなので、そう考えるとこの映画は「面白い」んだなとも思った(上から目線)
クローネンバーグの名前を背負っている流石の美術造形なんだけど、ヨアキム(トリアー)然り、そんなに前任の影は大きいのかな。でも前作もこんな作品だったし、ブランドンはこういうのが好きなんだろうけど〜
(ブランドンは実の息子でヨアキムは甥だからそこも違うんだろうけどもっ)

あとキッドハリントンににすぎ。
儡

儡の感想・評価

3.6
脳を乗っ取る、乗っ取られる者
美しい血と暴力
サイバー?犯罪
ジェンダーレス
単純に好き
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