くま

MOTHER マザーのくまのレビュー・感想・評価

MOTHER マザー(2020年製作の映画)
-
【1本目】イオンシネマ1DAYpass

7月上旬のSNS映画界隈で話題になった、イオンシネマ1DAYパスポートを使ってみた。
「1日中、映画館に入り浸る」という誰もが一度は憧れたことがあるだろう夢が2500円というお値打ち価格で叶えられるというもの。しかも、ドリンク飲み放題付き。ちょっとした天国行きの半券を手に入れた気分。

意気揚々と映画館に行き、すぐに見られる映画をスタッフの方に伺ったら、本作「マザー」を勧められた。
ポスターが陰鬱そうだったな、くらいの印象しかなく、軽い気分で視聴した。

--------------------------------------------

初めて映画館から途中退出したいと思った。
あらすじを知ってたら絶対に選ばない、そして今後2度と見ることのない映画だった。一生忘れない作品になった。

子供を所有物程度にしか考えてない毒親と、それでも母を愛する息子の、歪んだ関係性にフォーカスを置いた映画で、理解の及ぶシーンが1つとしてなかった。
「人に刺されておいて何の法的措置も取らんのかい」など、現実的に考えたら絶対おかしいはずだが、最早どこまでリアルなのか分からず、感覚も麻痺してしまった。

お金を渡して抱き締めることしかしない父親、虐待を傍観するしかできない市役所職員など、一見すると味方っぽいけど、その実なにも救済していない人たちの存在も相まってストレスフルだった。

根っからのクズと、天使の仮面を被ったグズの2種類の人間しか基本的に登場しておらず、予想通りの救いようのない結末で、見終わった後の虚無感が凄かった。

無言のまま、ずっと同じような画を撮り続けるシーンがそこそこあり、ギリギリ退屈に思えるか否か、絶妙なラインだった。
特に、終盤の橋を歩くシーンはストーリーの展開も相まって、二度と忘れることのないシーンとなった。目を瞑ればいつでも鮮明に甦る。

良い映画と手放しで言い切れないし、人に勧めたくはない作品ではあるが、そっと手に取って、じっと見て欲しい作品であることには間違いない。ある程度の覚悟はした上で。

この作品の最大の収穫は「奥平大兼」という役者に出会えたこと。16歳の彼にしか演じられない役で、見事に演じきった。これから注目したい。

朝の報道番組で流れる30秒程度のニュースを、重厚かつ残酷に仕上げた作品。
点数をつけて評価できるほど、今も脳ミソが処理できていない。
くま

くま