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マーベルズの雑記猫のレビュー・感想・評価

マーベルズ(2023年製作の映画)
3.0
 人間離れした身体能力と光のパワーを持った超人キャプテン・マーベル、物質透過能力と身体強化が可能な超人モニカ・ランボー、魔法のバングルで物質生成能力や肉体変化能力に目覚めた少女ミズ・マーベル。異星人クリーの戦士ダー・ベンの暗躍により、3人は光のパワーを使うたびに互いの座標が入れ替わる怪現象に巻き込まれてしまう。強制的にチームを組むこととなった3人は、宇宙壊滅を招きかねないダー・ベンの行動を止めるため、宇宙を股にかける冒険へと出発する。

 MCUの最新作。フェーズ1の最終作である『アベンジャーズ エンドゲーム(2019)』ですら、超強力な助っ人のような立ち位置であったがゆえに、あまり成長が描かれてこなかったキャプテン・マーベルの、チームヒーローとしての成長が描かれる。ストーリーのシリアスさとコミカルさの配分とバランスが絶妙な作品に仕上がっているのだが、これに大きく貢献しているのがコメディリリーフのミズ・マーベル/カマラ・カーン。ドラマシリーズ『ミズ・マーベル(2022)』からの合流組の彼女は、もともとがキャプテン・マーベルの大ファンのオタク少女という設定のおかげで、なにかとシリアスになりがちなキャプテン・マーベルとモニカ・ランボーの潤滑油としての役割を果たしており、物語のトーンが重くなりすぎないように調整している。それでいて、聡いキャラクターでもあるため、物語のシリアスさを邪魔しすぎないバランスのキャラクターにもなっており、とにかくバランスが良い。また、キャプテン・マーベル、モニカ・ランボー、ミズ・マーベルの3人からなる所謂「マーベルズ」の3人のチームとしてのルックのバランスの良さも評価したいところ。やはり、チームヒーローはズラリと並んだときのカッコよさが肝だが、水の惑星アラドナで新しいコスチュームに身を包んだ3人が横並びになるシーンはヒーロー映画に求めるワクワク感をしっかりと備えていて大満足だ。また、女性チームであるものの、ストーリー的にもルックス的にも彼女らにステレオタイプな女性らしさを求めていないところも好感が高い。

 一方、ストーリーに関しては若干の後出しジャンケン感が漂うのが難点。設定の提示の仕方がまずいのか、「そうだったのか!」というより、「え?そうなの?」となる場面が多い。「ダー・ベン(本作のヴィラン)はキャプテン・マーベルの大切なものを破壊して言っているのだから、次の彼女の目標は地球のはずだ」→「そんな話してたっけ?」、「ダー・ベンが開けた時空の穴は向こうの時空側からモニカ・ランボーが閉じることが出来るんだ」→「知らない設定だ……」といった具合である。そのため、SFでよくありがちな登場人物たちの目的意識がどこにあるのかよく分からない作品に本作もなってしまっており、この点が物語のカタルシスを欠いているように思われる。ただ一方で、マーベルズの3人がパワーを使うごとに座標が入れ替わるという設定は高く評価したい。この設定は、3人が団体行動をするという物語にスムーズに移行するための舞台装置として優秀なうえ、この現象をうまく扱えるようになる描写を通して、マーベルズの3人の結束が強まっていく過程を描くことにも成功している。この設定が呈示された瞬間から、「最終的にはこの現象を使って、敵を撹乱できるようになるんでしょう?」と読めるわけだが、そのベタを丁寧に描いてチームヒーローものとしてのカタルシスに繋げているので、結果オーライである。
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