プライ

マーベルズのプライのレビュー・感想・評価

マーベルズ(2023年製作の映画)
2.6
入れ替え能力を身に付けてしまったキャロル、モニカ、カマラの3人がチームを結成して戦う冒険譚。

つまらない。面白い部分を探す方が大変。見づらいアクション。芯が通らずガチャガチャな物語。テキトーすぎる主要人物たちの言動。歴代MCU作品の中でもワースト・クラス。1番つまらない可能性もある。

本作のキモとなる、主要キャラ3人が入れ替わりながら戦う能力ことスイッチ・アクションの魅力が少ない。まず、全体的にカメラが近すぎる。ただでさえ人物の入れ替わりでカシャカシャと場面が転換する上に、戦闘でワチャワチャしてる人物を近間で撮影したら見づらいに決まってる。そもそも本作はスイッチ・アクションに限らず、本作のアクション・シーン全般がカメラに近すぎる。本作の雰囲気的にドタバタ感を出したかったかもしれないが、見づらかったら元も子もない。でも、キャロル、モニカ、カマラの3人の現在地が同じ時のスイッチ・アクションは良く出来てる。3人をカメラのフレーム内に収めるため近間ではなくなる上、スイッチ・アクションならではの大喜利がある。ただ、個人的に面白かったのは戦闘以外でのスイッチかな…。

物語は穴だらけ。「謎の敵」と銘打ったヴィランが謎な存在ではなく、背景の説明が遅すぎるだけ。劇中、テンションの振れ幅に差が大き過ぎて生命の価値基準がブレブレ。キャラクターたちの呆気ない顛末やアッサリ片付けられるドラマ。それらにより、キャロルやカマラやフューリーといった主要人物たちの言動が原理のないテキトーなキャラクターに見えてしまっている。MCUを追いかけた方々には「キャロル・ダンバースって、こんなキャラだっけ?」と疑問符まみれになることだろう。また、ヴィランとの決着や事件の収拾が最悪レベルのオチである。

配信ドラマは観なくてもよい。モニカは『ワンダヴィジョン』、カマラは『ミズ・マーベル』でドラマが初登場になったが、配信ドラマの内容に深く言及してない。モニカとカマラの能力さえ知っておけば良いが、本作の劇中で説明はあるから大丈夫。「配信ドラマを観ないと本作の物語は追えない」という感想が出回ってるけど、結構なウソ。そもそも元来、一部を除いたMCUの作品は公開順に観なかったり、未見である前作の物語に触れたりしても劇中の物語は理解できるような仕上がりに施されている。『スパイダーマンNWH』の影響で「関連作品を全て観なきゃダメだ」や「過去作を観てないと過去作のネタバレを喰らう」という異常現象が起きただけであり、本作の物語は平常運転である。


⭐評価
脚本・ストーリー:⭐⭐
演出・映像   :⭐⭐⭐
登場人物・演技 :⭐⭐⭐
設定・世界観  :⭐⭐
星の総数    :計10個


~~以下、ネタバレありで本作のストーリーのダメなところを列挙~~

○本作で戦うことになるダー・リンが公式にてキャロルと因縁がある「謎の敵」として扱っているけど、全く謎ではない。背景を説明するのが遅いだけな気がする。確かに冒頭から背景が語られず、「謎の敵」として物語の進行と同時に正体が判明していきそうな雰囲気を醸し出してはいる。だが、すぐにキャロルと対面し、説明なくバチバチと火花を散らすことから因縁がありそうなのは読み取れてしまう。その後、ダー・リンの背景について言及は遠のくが、なんと最終的には中盤で主人公であるキャロルの口から説明するだけで「謎の敵」ことダー・リンの正体を明かしてしまう。なんと、主人公にダー・リンの背景を語らせないことで「謎の敵」扱いにしているという粗末な仕掛けである。なぜ、それを先に、ダー・リンと遭遇したモニカやカマラに説明しないのか謎だし、モニカやカマラもキャロルに問わなかったのかが謎である。現実的な整合性がない。キャロル、モニカ、カマラのキャラクター性がかなりテキトーである。

◯ 地上にいるカマラが雲の上にいるキャロルが入れ替わって落下死してしまう絶体絶命のピンチに直面した際、ニック・フューリーが「このままではカマラが高校を卒業する事が出来なくなる」とユーモアを取ってくる。ニック・フューリーって、そんなに他人の命を軽視する奴だっけ?また、宇宙船が墜落のピンチに陥った際にも、同様にユーモアばかり取っている。こんなキャラクターだった?

◯ 本作の生命の価値基準がブレブレ。スクラル人の生命は重く扱われ、カマラとアラドナ星の人々は軽く扱われている。まず、カマラが落下死しそうな時はコメディ的な意味で生命を軽く扱っている。その後、スクラル人は戦争的な意味で重く扱われている。この時点でバランスが悪い。コメディをしたいのか戦争モノをしたいのか伝わらず、観る者を錯乱させる。その後、今度は戦争的な意味でアラドナ星の人々の生命が軽く扱われる。その扱いが起きるのは、戦禍に巻き込まれて死に至ったスクラル人を見たカマラが「戦争において人々の生命は軽いんだ!」と誤った学習をしてしまったことにより、アラドナ星の人々を見捨てるという選択をしてしまったが故である。しかも、その後に反省の色はないし、キャロルやモニカもカマラに説法することもない。一体、本作における生命の価値基準は何処なんだ…。加えて、アラドナ星では陽気なミュージカル・シーンを詰め込む為、物語のテンションすら迷走している。

○ キャロルとモニカのドラマが呆気ない。数十年間も会わずに離れていた互いの気持ちをセリフだけでアッサリと片付けられる。加えて、わずか数分でモニカの感情がコロッと変わるので尚更アッサリしてる。その直後にコメディな雰囲気なノリに移行するため、悪い意味で情緒不安定すぎる。

◯ モニカとマリアのドラマも呆気ない。モニカがキャロルとカマラと一緒にダー・リンを探す糸口を思考してる最中に割り込む形で挿入され、1分ぐらいで片付けられる。これまたモニカの感情がアップダウンし過ぎて、悪い意味で情緒不安定すぎる。

◯ ダー・リンが呆気ない。他のMCU作品によくいる、序盤で戦って負けるヴィラン並みの熱量で死を迎える。最終決戦が始まってから数分で決着する。全然、盛り上がらない。これほどラスボス戦で熱量を感じないMCU作品は存在しない。しかも、ダー・リンを倒した後、次元の歪みを修復するフェイズに移行するため倒した余韻すらも感じさせる隙を与えない。

◯ モニカが呆気ない。ダー・リンを倒した後、次元の歪みを修復するためにマルチバースを越えて別の世界へ行ってしまうが、そのフェイズがダー・リンを倒した直後にすぐ始まる上、何一つ障害もなく修復を完了させるから、マルチバースへ行ってしまうモニカに心を動かされるものがない。せめて、ダー・リンを倒す過程においてマルチバースを渡る必要が出てきたということなら展開として自然だった。

◯ 事件の収拾が最悪。ダー・リンは自国の惑星を救う為、キャロルへの復讐を兼ねて地球の太陽を奪うわけだが、結局、キャロルのパワーでダー・リンの住む惑星を救う事が出来たのである。つまり、最初からキャロルがパワーを使えば本作の争いは起きなかった可能性が大いにある。それゆえ、ダー・リンとその部下たちもスクラル人もアラドナ星の人々も無駄死に近い。
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