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無頼のnadaのレビュー・感想・評価

無頼(2020年製作の映画)
4.2
主人公の絡み(セックス)はことごとく警察のガサ入れによって中断させられる。そう、これは射精──イクこと──ができない男たちの物語だ。マフィア映画やヤクザ映画に愛着する組員たちも、憧れた映画の登場人物のようにかっこよく、見事に死ぬことはできない。情けなく野垂れ死に、あるいはのうのうと世の中にかなうかたちで生きながらえてしまう。井筒和幸は、かれらの姿に「戦後」の日本の歩みを重ねて写し、16ミリのざらついた、あのふくよかな、あたたかみのある光で照らし出した。
アウトローたちの生き様を、正しいものとして理想化して撮るのではない。正しくはない人物たちの、間違っていることを、間違いのままに、ありのままに描写してみせる。そこに、僅かな──すなわち最大限の!──愛と敬意を忍ばせる。これが最良のクリティーク(批判=評価)である。
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