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テスラ エジソンが恐れた天才のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

3.2
【カイル・マクラクラン《エジソン》にいびられるイーサンホーク《テスラ》】
先日、日本でも『エジソンズ・ゲーム』が公開されました。本作はエジソンの電力戦争を描いた作品であるが、電流戦争を知っている人からすると、真の主役はニコラ・テスラなのではないかと思う。トーマス・エジソンは今や発明の父と呼ばれているが、実情はかなりイヤな人物であり、電流戦争はパワープレイ直流送電方式を押し通そうとした。それに打ち勝ち、交流送電を普及させたニコラ・テスラ目線の方が物語を作りやすかったのではないだろうか?そう思っていた矢先、テスラ目線で電流戦争を描いた作品が登場した。『TESLA』である。

なんと、テスラ役がイーサン・ホークで対するエジソンが『ツイン・ピークス』のカイル・マクラクランと聞いて早速観てみました。

カイル・マクラクラン演じるエジソンが、豪快に光り輝くライトを近くに寄せ、ロウソクの刹那な炎を持つイーサン・ホーク演じるテスラを徹底的にいびるところから始まる。本作は、『エジソンズ・ゲーム』同様エジソンとニコラの激突が描かれ、当然ながら電気椅子の場面も散りばめられている。そして、エジソンの嫌味な部分を強調し、黙しながらひたすら電気と向き合うテスラが描かれる。イーサン・ホークの押し殺した感情演出とカイル・マクラクランの徹底した嫌な奴っぷりの掛け合いがよくできており、オーソドックスな伝記映画だと思った...

しかし、本作は確かに王道の伝記映画の道筋で描いているのだが、どこかシュールで歪なのだ。突然、博物館の解説者のように女の人が登場し、Google検索でヒットする件数からエジソンとニコラの知名度差を語り始めたり、後半になると毒々しい色彩の世界でテスラの心象を描こうとする。しまいにはニコラ・テスラがカラオケなのだろうか?マイク片手に歌い始めるのです。

確かにカイル・マクラクランがいるので『ツイン・ピークス』の趣が侵略しそうな雰囲気はするのですが、それにしたって王道伝記映画の流れが時たま突然と裏切られ、シュールな展開をむかえるってぶっ飛びすぎである。それでも『エジソンズ・ゲーム』の空中分解ぷりと比べると、演技合戦ゴリ押しで許容できるレベルまで乗り切った感じがした。

さて、こんなアヴァンギャルドな映画日本で公開できるのだろうか?

少し不安になりました。
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