ななし

情婦のななしのレビュー・感想・評価

情婦(1957年製作の映画)
5.0
面白すぎて死ぬかと思った。ビリー・ワイルダー作品としては『アパートの鍵貸します』につづいて2作目の鑑賞だが、どちらも素晴らしくて、この監督の作品は制覇することを決意した。

さて、本作『情婦』はアガサ・クリスティの傑作戯曲『検察側の証人』のかなり忠実な映画化である。原作同様、映画もクリスティの騙しの技術が詰め込まれた、怒涛のどんでん返しが炸裂する法廷ミステリだ。

しかし、映画化にあたっては原作のプロットに忠実ながら、主人公である老弁護士の事務所メンバーを中心にコミカルなやり取りが大幅に増えており、普通にやればシリアス一辺倒になるドラマを格段に見やすくしている。

このアレンジの妙技がとにかく絶妙で、おかげで原作ラストのあまりにも救われない結末も(起こっているイベント自体は変わらずとも)、大きく救いのあるエンディングに変貌している。コミカルシーンもただ画面を賑やかすためではなく、めちゃくちゃ必然性があったんだ……と衝撃を受けた。

いやあ、大名作。
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