南

RUN/ランの南のレビュー・感想・評価

RUN/ラン(2020年製作の映画)
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監禁✖️毒親サイコサスペンス。

「面白かったな〜」とエンドクレジット見てたら監督がアニーシュ・チャガンティで驚く。『search』もすごく良かったんだよな。

監禁モノは数あれど、とりわけ

「フツーの住宅地のフツーの家」

という舞台設定が好き。

というのも、

絶海の孤島とか誰も立ち入らない森という舞台設定にはない

「一見平和に見える世界でこんな惨劇が起きるなんて…」

というギャップが楽しめるのが一つ。

それから犯罪が行われている場所と一般社会の距離がなまじ近いぶん

「周辺の住人たちが気づいてくれないかな…」

ヤキモキが増すんだよね。

なおかつ『RUN』は監禁する側の異常心理をフィーチャーしていて、サラ・ポールソン紛する毒母が完全に狂っていて素敵だ。

娘に対する残虐行為が「120%善意」であるだけに邪悪さが深い。

主人公の女の子が助けを求めて駆け込む薬局の薬剤師さんがキャシー・ベイツって名前で『ミザリー』だったり(同じく監禁発狂女の名作)、

発狂女に監禁される車椅子の女性という設定はもろ『何がジェーンに起こったか?』だったりと、

過去の名作へのオマージュが散見されるのも楽しいポイント。


同系統の作品だと『クリーピー』の香川照之なども「あ、こいつには普通の良識や常識というものが一切通じないんだ…」という深い絶望と諦念を与えてくれてお気に入り。

それから

「人物が機転を利かせ、ありあわせの物品を駆使して事態を切り抜ける」

という胸アツ展開にもワクワクした。

「ふだん見慣れたありふれた物も、別の視点で見ることで価値を再構築できるんだ!」

という喜びを与えてくれるんだよね。

さらに「早急に解決しないと命が尽きる」というゲーム要素もあってハラハラがあるシーンだった。

「機転とありあわせの物品」による見せ場といえば『ホームアローン』『キャストアウェイ』、『ボーン』シリーズなども印象的。

普通の住宅に監禁された人が逃げ出そうと試行錯誤する姿を描いた作品だと『ルーム』とか『不意打ち』もグーだ。

車椅子生活をしてる主人公が1階と2階の昇降に特殊な機械を使う設定とか『不意打ち』っぽかったしね。

命からがら監禁から逃れたけど毒親に見つかって再び連れ戻される展開には『ファニーゲーム』終盤の展開を思い出した。

主人公が何度も何度も脱出に失敗し苦悩を味わい、ため込んだ怒りと悲しみと恐怖が、一体どう昇華されるのか。

快哉を叫ぶと同時に戦慄を覚える人も少なくないはずだ。
南