シャークワイア

ジョーズ キング・オブ・モンスターズ/ナイトメア・シャークのシャークワイアのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

悪魔に出てきたサメに現実でも襲われる、という映画。グリフ=ファースト監督の最新作です。

キング・オブ・モンスターズというタイトルは適切ではありませんね。B級サイコホラーですので。

さて、映画の内容については他のレビューで散々触れられているので、このレビューではキャスト陣について語りたいと思います。
※完全にネタバレレビューです。

○偏りのある登場人物説明
主人公のエヴァは小さい頃にサメに襲われたことをきっかけに悪夢を見始めます。サメに襲われる、ということがフラグになってる訳ですね。
しかしながら、エヴァがサメに襲われる描写は丁寧に描きつつ、同様の悪夢に悩むその他4名の患者についてはほぼノータッチです。
その4人とは、ロブ、ジョリーン、ジーナ、カプランのことで、彼らはそれぞれ、グリフ=ファースト監督の手掛けた「シャークショック」と「シンジョーズ」の主人公なのです。

○匂わせぶりなキャスティング
上記キャラは演じている俳優まで同じです。しかし、これだけならただのファンサービスにも見えます。実際、映画の世界では監督と俳優の縁故で出演するケースはザラにありますし。私も最初はファンサービスかと思って、他作品とは切り離して鑑賞していました。

○カプランの脚
映画序盤、博士の研究所までやってきた一行はMRI検査を受けます。そこでカプランの放った一言が、
「脚が悪いんだ 留め具があるから検査できない」です(要約)。
カプランはシンジョーズの主人公で、脚に障害を抱えたライフセーバーでした。

○ジーナの赤ビキニ
ジーナはシンジョーズの主人公で、筋肉質な体と赤いビキニが印象的なキャラでした。
ナイトメアシャークでは、わざわざ当時の赤いビキニを着るシーンがあります。一瞬で着替えちゃうんですけどね。

○ジョリーンのチェーンソー
ジョリーンはシャークショックの主人公であるロブの彼女です。シャークショックと言えば、シャークネードで有名なタララードがカメオ出演し、シャークネードを連想させるチェーンソーを構えたことが(一部界隈では)有名ですね。
ナイトメアシャークでは、納屋で武器を探すシーンがありましたが、ジョリーンが武器として持ち上げたのが他でもないチェーンソーなのです。

○シャークショックの新聞記事
物語終盤、ロブの顔写真が掲載された新聞記事がチラッと映るのですが、その記事のタイトルは、「熱帯暴風雨で、沼地のトレーラーパークへサメが解き放たれた」です。
これはまさしくシャークショックのあらすじです。

○繋がった世界観
以上のことから、明言こそされていませんが、ナイトメアシャークがシャークショック、シンジョーズと世界観を共有していることは明らかです。
彼らのサメとの戦いは既に映画一本分描かれていますから、ナイトメアシャーク内で彼らの過去が語られないことにも合点がいきます。

○ナイトメアシャークは監督のリベンジ
ここからは完全に私の想像です。根拠なんてありません。
グリフ=ファースト監督の代表作と言えば、みんな大好きゴーストシャークですよね。この映画、サメ×幽霊のトンデモサメ映画と評価されがちですが、その内容は案外シリアスなものでした。
恐怖の象徴であるサメがどこにでも現れる、ということは本来ホラー要素のはずなのです。しかしながら、ゴーストシャークはどこかギャグのような仕上がりになってしまいました。
対するナイトメアシャークは「どこにでも現れる恐怖」を効果的に表現しています。
グリフ=ファースト監督は、ゴーストシャークのリベンジをしたかったのではないでしょうか?

○テレビサメ映画という制約
ホラー映画に必要なもの。それは綿密なキャラ描写です。
しかしながら、テレビ映画であるナイトメアシャークには、90分の尺しかありませんでした。また、サメ映画である以上、食べられ役も必要です。
思うに、この問題を解決するために、既に十分に描写されたキャラを登場させたのではないでしょうか?

○ナイトメアシャークは監督の集大成
グリフ=ファースト監督のサメ映画はどれも脚本が秀逸で、かつ人物描写も丁寧な作品ばかりです。そんな彼の例外がゴーストシャークでした。
監督は近年のヒット作で培ったプロットと人脈をフル活用して、シンジョーズとシャークショックの「その後」を描くとともに、ゴーストシャークが達成できなかった恐怖表現を実現しようとしたのではないでしょうか。

○結びに
長文となりましたが、以上がこの映画を観た感想です。
監督の集大成と書きましたが、この映画が集大成だとしたら、正直がっかりだなぁというのが本音です。メタ要素を交えつつ、映画の本筋だけでも楽しめる、というのがグリフ=ファースト監督の持ち味だと思っていましたし。
しかしながら、監督の過去作には無い、サイコホラーな映画であったことは、後々の映画にも期待が高まります。

グリフ=ファースト監督の次回作に、ぜひご期待ください。