くろさわ

ビバリウムのくろさわのレビュー・感想・評価

ビバリウム(2019年製作の映画)
4.0
監督の想いを知る前と後で印象が大きく変わった映画


カンヌ国際映画祭では「ギャン・ファンデーション賞」を受賞している作品。


物語は冒頭カッコーの映像から始まる。
教師のジェマと庭師のトムの2人は新しい引越し先を探していた。偶然、入った不動産屋にていかにも怪しい担当者から夢が詰まった家「Yonder」紹介され、半ば強制的に内見させられることに、それが迷宮入のはじまりだった。。。



薄ーい不気味な世界に引き込まれる映画。
世にも奇妙な物語を見ているような感覚。

この映画を見た人で、普通のスリラー作品と思った人は是非、ロルガン・フィネガン監督のインタビューを読んで欲しい。

インタビューを読む前と後でこんなにも印象が変わった映画は初めてかもしれない。


今の社会は物を持つ所有する時代から共有する時代へ変化しており、サブスクリプションサービスも定着している。
映画やCDだけでなく、車や服まで買わなくても利用することができる。
しかし、未だに所有することに価値があるという意見が多いのが「マイホーム」。

このマイホーム、理想の暮らしから資本主義や消費社会への皮肉を込めた映画が「ビバリウム」である。

ビバリウムで描かれている暮らしは奇妙に見えるが、実は現代の生活を表している。

細かい内容はパンフレットを読んで貰えば書いてあるが、緻密に計算された内容に感動させられた。

人間、どんな環境であれ慣れてしまうと疑問や不満を持たなくなってしまう。しかし、表現角度を変えるだけで、悪夢のような現実に気付かされる。

そんな体験をさせてくれる映画だと思うので、本作を見ただけの人は、ぜひ監督のインタビューやパンフレットを読んでほしい。