映画の道化師KEN

ビバリウムの映画の道化師KENのネタバレレビュー・内容・結末

ビバリウム(2019年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

そこを出たくば、育てろ!

監督はロルカン・フィネガン。主演は「ゾンビ・ランド」シリーズのジェシー・アイゼンバーグと「ジェーン・エア」のイモージェン・プーツ。加えて、「サイトシアーズ 殺人者のための英国観光ガイド」のジョナサン・アリスが共演する!

新居を探すトムとジェマのカップルはふと足を踏み入れた不動産屋で全く同じ家が建ち並ぶ住宅地「Yonder」を紹介される。内見を終えて帰ろうとするとすぐ近くにいたはずの不動産屋の姿が見当たらない。2人で帰路につこうと車を走らせるが周囲の景色は一向に変わらない。住宅地から抜け出せなくなり戸惑う彼らのもとに段ボール箱が届く。中には誰の子かわからない赤ん坊が入っており、2人は訳も分からないまま世話をすることに。追い詰められた2人の精神は次第に崩壊していき…

新居を探す仲睦まじいカップルが気味の悪い不動産の営業マンに連れられた住宅地から抜け出すことが出来なくなり、外に出るため、不可思議な住居で謎の赤ん坊の子育てを強いられるサスペンススリラー!

見どころはカッコウの托卵に人間を当てはめた、子育て生活。劇中のトムとジェマは不気味な子供を仮親として育てさせられる。しかも、普通の子供よりも早く成長し、気に入らないことがあれば雛鳥のように鳴き続ける。その姿は正に、カッコウそのものだ。更に、現実でも起こりうる家庭の様相を社会風刺として描いているのも本作の特徴。中盤以降、子育てをきっかけに2人の関係は徐々に悪化する。最終的にジェマは1人で子育てに苦心し、トムは毎日、庭を掘り続ける。まるで、仕事に明け暮れ、家庭を顧みない夫と孤独の中、子育てを強いられる妻の縮図だ。

ミステリー要素とメタファーを巧みに盛り込んだ本作は難解ではあるものの、芸術的センスに満ちた不気味な世界観は非常に見事な出来栄え。成人した子供が冷酷に巣立つシーンは後味が悪いものの、じわじわとくる怖い演出は見応えがある。ただ、人によっては胸糞感が強すぎて気分を害する人もいるかもしれない。

余談だが、タイトルの「ビバリウム」は生き物の住む環境を再現した空間という意味。