浅野公喜

サモン・ザ・ダークネスの浅野公喜のレビュー・感想・評価

サモン・ザ・ダークネス(2019年製作の映画)
3.3
悪魔崇拝+ハードロック・ヘヴィメタル(HR/HM)な作品。ここの評価は高くないですが、そんなに悪くありませんでした。

細かいあらすじを見ているか(あるいは80年代のHR/HMの扱いを知ってるか)どうかで評価が変わってきそうです。それは襲う側と襲われる側の予想が違ってたのが理由で、細かいあらすじしか知らなかった自分にはこのミスリードが新鮮で助けを求めた先が実は・・というのは少し「悪魔のいけにえ」を連想し、状況に対して意外と繊細に動くアレクサンドラ・ダダリオの青い眼と並び印象的でした。そしてサスペンス・ホラーとしての描写や刺激は確かに薄目であるものの、HR/HMと宗教、本当に悪影響なのはどちらなのかという意外と考えさせるテーマが有りました。

というのは、北米では80年代中盤に暴力的性的な歌詞を取り締まるティッパー・ゴア率いる委員会・PMRCが設立しましたが、その委員会が槍玉に挙げた多くの曲は当時のHR/HM系グループのもので、その歌詞や内容を批判しましたが実際はかなりの偏見や誤解も多く、その一方的な批判をする委員会が劇中の宗教団体と重なってしまったから。そしてその団体寄りのニュースを観ながらの終盤の「真実は隠れている」という台詞は団体だけでなくメディアを含めた批判として響きます。

当時が舞台だけに劇中にOzzyやScorpions、Def LeppardやMetallicaのクリフが云々と80年代のHR/HM好きには嬉しい固有名詞が出てきます。惜しむらくは当時のそういった楽曲は劇中には殆ど流れず、大きく使用されるのは非HR/HMのBelinda Carlisleの「Heaven Is A Place On Earth」(しかもカバー)とエンディングのT'Pau 「Heart And Soul 」等。宗教×HR/HMがテーマなら、せめてメンバー全員がクリスチャンで聖書を投げるパフォーマンスも有ったというStryperの曲を使用するなり台詞で登場させる位はして欲しかった所。
浅野公喜

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