阪本嘉一好子

The Cat and the Moon(原題)の阪本嘉一好子のレビュー・感想・評価

The Cat and the Moon(原題)(2019年製作の映画)
4.8
アレックス・ウォルフの才能には驚いている。20代で、監督、脚本、主演、音楽もなどと多才な力を発揮できるのには驚き。映画は高校生の主人公役をアレックスが演じる。少し映画が長いので退屈感があり、Fや悪い言葉の連発で、『いい加減にしろ』と怒鳴りたくなったが、まあ悪く無いな。こんな一つ一つ克服していく生き方をしながら、成長していくんだなと思ってみていたから、少し寛大な気持ちになれた。   


ニューヨークのマンハッタンの南にあるフルトン通りから地下鉄に乗って学校に通うようになったようだ。よくわからないが、地下鉄のプラットフォームから落ちたような落ちたくないような衝動がう伺えるから、精神的にやんでいる転校生かなと最初思った。アイルランドの詩人ウィリアム・バトラー・イェイツ(William Butler Yeats,)の詩The Cat and The Moonを映画の題としているが、ニックの父親がニックが眠れるようにと読んでくれただけで、この映画の題にしたわけでは無いと分かっているが、これ以上の意味はもう一度観ないとわからない。もしかしたら、バンド仲間のお父さんの友達カルがニックにニューヨークに残れというシーンがあるが、この意味かな? 二人がジャズを演奏するシーンがあるがカルの満足感は高かった。ニックの父親と演奏していた時代を思い出しただけだと思ったが、カルとニックは血は繋がっていないが、ジャズを通じて共通点を見出したという例えがこの詩と同じ?

最初、デトロイトからニューヨークに一人で引っ越したという高校生で、初めはこの設定が理解できなかった。この高校生、ニックはクラススケジュースの読みかたもよくわからない。それに、トイレで、麻薬を使うし? 英語には外国人のアクセントがない。なにかおかしいなあとおもって見ていた。

わかった。ニックの母親が精神的に入院した病院を退院するまで、他界した父親のバンド仲間、カルが一時的に預かっていることが。この映画は、ニックの精神的な向上の過程を見せていると思う。父親はニックが子供の時鉄道自殺をしてしまった。ニックが小さい時The Cat and The Moon を読んで聞かせてくれたのに、やさしい父親に何があったのか?それに、よって、母親も?カルは口うるさい存在であったが、ニックの衝動的な爆発が、ニックの不可思議でも憧れの存在だった父親の本質を結果的に暴露させた。はじめて、ニックがカルによりそい、胸の中で泣いた。多分、ニックは怒りを爆発することができても、心から大泣きすることができなかったと思う。大泣きできる存在の人がいなかった。良いシーンだ。このシーンが好き。