うめ

グッバイ、レーニン!のうめのレビュー・感想・評価

グッバイ、レーニン!(2003年製作の映画)
5.0
数年ぶりの鑑賞。東西ドイツ統一をテーマにしたドイツ制作の作品の一つであり、ダニエル・ブリュールの出世作でもある。
基本的にコメディタッチなのだが、そのなかにも深い意味が表されているのがとてもうまい。東西統一と言いつつも、実際は東ドイツが西ドイツに吸収される形となり、西側のものが東側にどっと流れてきた。イケアにコカ・コーラ…そんな物品が流入することによって、東側の人々が維持してきた環境があっという間に崩れてしまう。もちろんそれは東側の人々の失業や貨幣の変化という現実的な点も含んでいるのだが、この作品では「アレックスの母親が守ってきた東ドイツ」というものが崩壊しようとする。それはその後いなくなる父親と楽しく過ごし、宇宙飛行士イェーンに憧れていた少年時代のアレックスが暮らしてた東ドイツでもあった。オスタルギーという言葉をこの作品は非常によく表している。合理的に考えると、あらゆる点で西側に劣っていた東側は西側に吸収されてもしょうがないし、利点があると思うかもしれない。だが、アレックスやその母親のようにそこに暮らしてた人にとっては、どんなものであれそれがかけがえのない物であるのだ。こうした感情は東西ドイツに限ったことではないと思う。
多少史実と異なる部分もあるが、東ドイツの暮らしを知ることができるし、当時の映像も使用されているので、当時の歴史の流れも少し学ぶことができる。この時代のドイツを扱っている作品としてはとても見やすい作品なので、是非多くの人に観て欲しいと思いをこめて、高評価を。
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