SEULLECINEMA

百年の絶唱のSEULLECINEMAのレビュー・感想・評価

百年の絶唱(1998年製作の映画)
5.0
前半はやや冗長だったけれども、その冗長さのなかに積み重ねられた諸要素が一気に爆発する後半が凄まじい。
ハイライトを吸ったことを最終的な契機として圭ちゃんと"繋がって”しまった平山の気が狂ったシーンののち、卵が窓に投げつけられる画面の唐突さに驚いた瞬間からラストまでノンストップでフィルムが運動し続ける。追走シーンの、ステディカムなど知ったことかと言わんばかりの手持ちキャメラのブレブレの映像が、自主映画の楽しさと心地よさを感じさせてくれた。
そして、女と平山が抱擁するショットが、女と圭ちゃんとの繋がりが先行してそれがそのまま平山と圭ちゃんの繋がりを決定的なものにしてしまう瞬間を捉えていて、その力強さに震えた。
卵以降、とにかく画面の唐突さに驚かされるばかりだったけれど、やはり階段で役人を殺すシーンのモンタージュは素晴らしかったし、何より運動の切迫さに松葉杖という要素が加わることで凄くドラマチックな仕上がりになっていたように思う。
そして、何と言ってもベートーヴェンの第九をバックに平山=圭ちゃんが圭ちゃんの故郷を走り抜けるラストのシークェンスはあまりにも映画的で、撃ち抜かれる。映画の疾走シーンのなかでも3本の指に入るくらい好きだった。
あの第九、70年のコンツェルトハウスのバーンスタインの音源にも似ているような気がするけれど(テノールがドミンゴっぽい?)、どこの音源なのかいまいち判然としない。しかし、やはり素晴らしかった。
あと、「和田アキ子はすばらしい!」と力説する度に音楽仲間にバカにされてきた自分としては、「どしゃ降りの雨の中で」が決定的な意味をもっているこのフィルムに凄く救われたような気分になった。
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