EDDIE

マシニストのEDDIEのレビュー・感想・評価

マシニスト(2004年製作の映画)
4.7
極度の不眠症が巻き起こす不穏な出来事の数々。謎の男アイバン、空港カフェのウェイトレス、血の湧き出る冷蔵庫、不審なメモ、赤い車、ドストエフスキー“白痴”、数々の伏線とアイテムが回収されていく模様が実に爽快。不眠症の人間の苦悩をこれでもかという程体現した傑作スリラー。

クリスチャン・ベイルが30kgもの減量をして骸骨のような体型で佇む異様な姿が印象的な本作。該当の写真はネットやSNSで沢山見る機会がありましたが、肝心の作品は遂に初鑑賞でした。いやぁ、これは凄い作品だ!こんなに引き込まれて見入ってしまった作品も久しぶりかもしれません。

冒頭でいきなりカーペットに包まれた死体のようなものを海に捨てているトレバー(クリスチャン・ベイル)の姿。果たしてこれからどんな映画が始まるのか。

有名なぴよぴよみたいな出で立ちでガリガリ姿を披露するのは割と序盤だったんですね。それにしても本作の後『ダークナイトトリロジー』で鍛え上げた身体を見せるベイルの姿を知っているだけに、骨が浮かび上がるほどに痩せた姿には唖然。『ジョーカー』のホアキン・フェニックスも思い出されました。

しかし、面白いのは本作に散りばめられたあらゆる仕掛け。そもそも主人公のトレバーは不眠症という設定なんですが、その不眠症になった要因や彼の身の回りに起こる不可思議な現象がすべてラストに向けて回収されていくのがとても気持ちがいいんですね。
不眠症のトレバーはウトウトした時にちょっとした物音に起こされてしまうし、車で仮眠を取ろうとしていると隣の車に乗っている謎の男アイバンに話しかけられるしで、全然眠りにつけません。
自宅でも一度目が冴えてしまってからはバスルームを漂白剤を使ってゴシゴシと掃除し始めたりと人間の3大欲求の一つである睡眠というご褒美になかなかありつけないんですね。

体重はどんどん減っていくし、食べても戻すし、公共料金は支払い忘れるし、もう人間的な生活を送るのも困難で、職場からはクスリやってんじゃないかって疑われるしで散々なトレバー。さらには最悪な事故まで起こってしまうしで。
とにかく102分という時間ですが、画面に釘付けになって目が離せませんでした。
物語の中で現れる謎のアイテムや伏線がラストまでに怒涛のように回収されていくのが本当に気持ちがいい。最高でした!

ただやはり本作の学びとしては、不眠症とか統合失調症とかで悩む方って無症状の人間には到底理解できない苦しみがあるんだなということ。作中トレバーも色んな人から開口一番「大丈夫か?」って声かけられて、「なぜそれを聞く?」って返すんですけど、苦しいはずの本人も無自覚だったりするんですよね。あんなガリガリなのに「俺は至って健康体だ」とか言ったりするんだから。本人のことをわかるよき理解者がしっかりと対話してコミュニケーションを取れるっていう環境を作ってあげるのもとても大切だなと感じました。

※2020年自宅鑑賞253本目
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