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日本人の忘れもの フィリピンと中国の残留邦人のmeikoのレビュー・感想・評価

5.0
見れてよかった...間に合った。見逃すなんて惜しすぎる内容やった。
フィリピンに1年もいたのに、わたしがなにも知らず歩いてた街に残留孤児のおじいさんおばあさんたちが、無国籍と認識もされずに暮らしてたなんて、全く知らなかった。教育も受けられない、貧しい生活。もちろん海外にも行けない。お父さんを目の前でフィリピン人ゲリラに惨殺された孤児もいた。(フィリピンゲリラが理由のない殺人をしたということではなく、日本軍がフィリピンでやった残虐の限りの悪事への報復でしょう)そんな中で戦後を生き抜いた孤児の苦しみは深いと、顔を見れば、わかった。それでも明るく話し、冗談をとばし、最後に少し涙ぐむ姿は、わたしの覚えてるたくさんのフィリピンの力強い女性たちの姿とかぶった。
中国残留孤児の存在はある程度認識されてるけど、フィリピンはぜんぜん。その対比で映画が進むのでわかりやすい。
この問題解決に尽力する弁護士、新聞記者、npoスタッフそれぞれの方々の思いと、日本に帰国した残留孤児のみなさんの日本中国両方への「恩返し」の活動の数々に、胸が熱くなる。という表現は陳腐やけど、それ以上のものを受け取った。
監督の上映後トークで、「もうすぐこの世を去る高齢の孤児たちの映像を今日、見た皆さんは歴史の目撃者です」ということばが印象的だった。それぞれができることをすればどんな山も動かせる気がする、力をもらえるドキュメンタリー映画でした。

ひとつだけ、もっと知りたかったというか、まだ描かれていないと思ったのは、孤児のおばあさんたちにとっての、日本国籍を取る精神的な意味。日本人と名乗れば殺された戦後を、この人たちは自分のアイデンティティをどこに置いて心を殺して生きてきたんやろうと思う。「日本国籍を取れて嬉しい」と笑って堂々と言えることそのものが、戦後75年たったからなんだろうか。
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