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狭霧の國のmitakosamaのレビュー・感想・評価

狭霧の國(2020年製作の映画)
3.8
30分くらいの短編で限りなく自主制作に近い作品だね。
特撮を用いた怪獣映画なのだが、特筆すべきは人形劇という点だ。登場人物が全てリアル系の人形という、とてもユニークな試み。

明治時代の大分の山村。街から親戚を訪ねて来た主人公は、その家で蔵に軟禁されている、盲目の女性を見つける。地元の名家として不祥の子供を隠し続けている。
また、この家と村にゆかりのある沼には謎の巨大生物が存在する。

まず、シンプルに人形が怖いんだよね。リアルな日本人形ぽい顔が只々不気味。当然人形だから無表情だし、動く時も不自然さを残し、音もなく横移動する。コレがなんか絶妙なホラー感を醸し出す。

この気持ち悪さは、そのまま劇中のムラ社会の閉塞性と直結する。今作の舞台が、不気味な田舎の村という印象漬けに見事に成功しているのが凄い。

そして怪獣だ。一応ネブラって名前もあるようだ。ネブラはゴジラの様な二足歩行でなく、プロントザウルスみたいな四つ足なんだよね。ここは好みが出るかなぁ。

分家のイキってる輩が騒ぎを起こし、ネブラは沼を出て街に降りてくる。
ゴジラが核兵器の恐怖を具現化したものであるように、怪獣とは“恐怖の暗喩”である事が重要だ。
今作のネブラとは、ズバリ“田舎の閉鎖性”を具現化した怪獣だと言って良いと思う。だからこそ主人公とヒロインは家が無くなり、村の束縛から逃れるという結末を迎えるのだ。

沼と鳥居と怪獣というシチュエーションのビジュアルが美しいし、電柱とネブラのカットも素晴らしかった。エンドロールの絵巻物風のカットもセンスの良さに脱帽。

人形劇で怪獣映画を作るという試みに、恐らく監督だけが完成の際のビジョンが見えていたのではなかろうか?普通は思いつかない発想だもんな。この監督には、今後も作り続けて欲しい。
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